利用者インタビュー

interview07

―まず先生のご研究について教えて下さい。―

世界で一つしかないSTMBEの開発と、それを用いた量子ドットの成長に関する基礎研究を行っています。MBE(Molecular Beam Epitaxy)では数Å(0.1-1nm)オーダーの、単原子層レベルで制御した成長ができます。私はそのMBE装置とSTMを完全合併し、結晶成長をその場観察しています。

―ゲートバルブで仕切りした別チェンバーなしでそのままSTMをMBE内部に設置しているのでしょうか?―

その通りです。みなさんに驚かれますが(笑

―ナノプラットでは大阪大学を利用されていますが、研究テーマを教えて下さい。―

化合物半導体GaAs内に埋め込まれたInAs単一量子ドットは単一光子を利用した量子暗号通信の光源として注目されています。しかし一般的な作製法が自己組織化を利用したものであり、ナノレベルでの位置制御が困難でした。STMBEを用いることで、任意の位置に高品質の量子ドットを1個、成長中に作製することが可能です。しかし、その作製した量子ドットを後から探すのが困難なため、成長するところに目印をつける方法に着目しました。目印を基板につける=フォトマスクパターンを作成しています。

わが校にはクリーンルームも、微細加工ができる装置もありません。当時、大阪大学の招へい教授をしていたのですが、阪大に、そのような装置が誰でも使えるという情報をもらい、利用させて頂きました。

stmbe_2

ryosidot

―使ってみて感想を教えて下さい。―

スタッフの皆さんがとても親切で助かりました。実際の実験には阿南高専の技術職員の方々に協力して頂き、一緒に利用しました。まだまだこの研究は試行段階ですが、今後もパターンに試行錯誤を加えながら、量子ドットの基礎研究に役立てていく予定です。

ナノを作る技術を作る

―この世界に入ったきっかけを教えて下さい。―

大学生のころにバイトしてHe-Neレーザーを買うほど、レーザーに興味がありました。学内でたまたま見つけた外研のポスターに「レーザー」の一文字があり卒研の研究室を即決しました。実際には、メインは半導体結晶成長の研究室でしたが、それがきっかけでMBEと出会いました。
その後、修士課程を希望していましたが、どん詰まりになり、そのままアメリカへ渡りました。
ミシガン大のとても厳しい教員のもとで睡眠時間も2~3時間という生活を続けました。アメリカでの経験は本当に大きかったです。日本との違いを痛感する日々でした。

―そのようなハードな生活に耐えられたのはなぜでしょうか?―

何もなしで日本には帰れないと思っていました。実際には帰る旅費もなかったのですが(笑
また女手一つで育ててくれた母の存在も大きかったです。渡米を目前にしてその母が重い病気になったのですが、その際、「自分のために人生をあきらめるな」と言われました。それはまさに母の生き方そのもののような言葉ですが、背中を後押しされた言葉でもありました。

dsc02795_1

dsc02762_1

その後パーマネントの職につくも、夢を追い辞職

―基礎研究のための退職とのことですが、先生にとって基礎研究とは?―

基礎がわかっていなければ、必ず将来つまずきます。ですから基礎研究をないがしろには絶対にできない。そういう思いから基礎研究を真面目に続けていきたいと思っています。

―移動先の阿南高専での研究と、高専の魅力とは?―

ナノプラットや他大学・国研・企業との共同研究と通して基礎研究を続けています。最近ではこのSTMBEを利用して化学合成用の担持型触媒の作製なども行っています。
高専はご覧のとおり、最先端の設備はありません。しかし、教員は一流です。特に数学・物理の教員は一流の理論家の研究者が多いです。私の授業では、このSTMBEと量子ドットを教え、学生に独創的なアイディアを考えてもらうような授業をしていますが、皆真剣に取り組みます。ぜひ、高専の学生が自分の可能性に気づいて世の中で更に活躍してほしいと思っています。

dsc02819_1

dsc02773_1

※共同研究者: 東條孝志a、長谷川繁彦b、川端明洋a、立石学a、遠野竜翁a、松下樹里a、高岸時夫a、大道正明a,c、吉田岳人a
a阿南工業高等専門学校 b大阪大学産業科学研究所 c現在、金沢大学

 

この研究に関するお問い合わせ:大阪大学

利用者インタビューバックナンバー

©2017 Molecule and Material Synthesis Platform All rights reserved.