名古屋工業大学

2014年度 成果事例

バナジウム含有ハロゲン化酵素の反応機構解明を目的としたモデル錯体合成とその反応性
a愛知工業大学, b名古屋工業大学
梶田裕二a,b

【目  的】
バナジウム含有ハロゲン化酵素(VHPO)は、過酸化水素、ハライドイオン、およびプロトンを用いて次亜ハロゲン酸を生成し、有機物をハロゲン化する酵素である。しかし、次亜ハロゲン酸が生成するメカニズムについては未だに不明のままである。そこで、VHPOの活性中心を正確に模倣したモデル化合物を合成し、過酸化水素とハライドイオンおよびプロトンとの反応から、次亜ハロゲン酸が生成するメカニズムを明らかにすることを本研究の目的とした。

【成  果】
VHPOのバナジウム中心の構造は五配位三方両錐構造をとっていることが既に明らかになっている。そこで、我々は、三方両錐構造を選択的にとることができるための配位子として、Bis(hydroxyethyl)pyridine骨格を有する2種類の配位子を合成した。合成した配位子を用いて、バナジウム(V)錯体1および2の合成を行った。得られた錯体のメタノール-ジクロロメタン混合溶液を、ジエチルエーテルを用いて気−液拡散させることにより、結晶構造解析に適した結晶を得ることができた。得られた結晶構造を図1および図2に示した。得られた結晶構造は、VHPOの金属中心の構造に類似した五配位三方両錐構造をとっていることが判った。また、中心のバナジウムイオンには、配位子由来の2つのアルコラート、1つのオキソ、溶媒のメトキシドおよびピリジン窒素が配位しており、配位環境もVHPOに大変類似しており、VHPOと同様の反応性を示すことができることを期待できる。
得られた錯体1および2を、臭化物イオン、過塩素酸存在下、外部基質である1,3,5-trimethoxybenzeneと反応させたところ、基質を臭素化していることをNMRスペクトルの測定から確認し、特に錯体1では50%ほどのハロゲン化能を示した。
今回の結果より、合成した錯体がVHPOの良いモデル錯体となり得ることが判った。現在、反応条件の最適化を行うと共に、反応中間体についての検討を行っている。

NI_2_Fig1
図1. 置換基にiPr基を有するバナジウム錯体1の結晶構造
NI_2_Fig2
図2. 置換基にPh基を有するバナジウム錯体2の結晶構造

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