物質・材料研究機構

2014年度 成果事例

グラフェンの結晶性評価
筑波大学数理物質科学研究科
村上勝久、桑島知也、猪狩智彦、檜山卓希、Gu XiZi, 田中駿丞、蛭川彩夏、藤田淳一

【目  的】
グラフェンは高い電子移動度、優れた光透過率を有することから、次世代高速トランジスタや透明電極など様々な分野での応用が期待されている。これらの応用では、層数を制御した結晶性の良いグラフェンの大面積合成が重要な課題となっている。現在最も有力な大面積グラフェン合成手法はCu基板上へのCVD(Chemical Vapor Deposition)合成であるが、透明電極や電子デバイス応用のためにはCu基板から絶縁基板上へのグラフェン転写プロセスが必要となる。我々の研究グループでは、Ga蒸気を触媒として用いたCVDによって絶縁基板上に大面積のグラフェンを直接合成する手法を見出し、その結晶性をラマン分光により評価した。

【成  果】
石英管加熱炉内にGaのリザーバーと石英基板を配置し、大気圧下(1 atm)または減圧下(0.1 atm)で炉管内にメタンとアルゴンガスを導入し1050度で加熱すると、石英基板表面はGa蒸気とメタンガスの混合雰囲気に暴露され、表面全体にグラフェンが合成される。合成したグラフェンの結晶性をラマン分光装置を用いて評価した。
Fig.1に石英基板(2 cm角)に直接合成したグラフェンの光学写真(a)、ラマンスペクトル(b)及びメッシュグリッドに転写したグラフェンの高分解能TEM(Transmission Electron Microscopy) 写真(c)を示す。石英基板は良好な光透過性を保ったまた、デジタルマルチメータで計測すると、表面で導電性を示すことが分かる。またラマンスペクトルからグラフェンに特有のG, 2Dピークが観測され、石英基板に直接グラフェンが合成できることが分かった。また、面内(80 μm x 5 μm)で平均したラマンスペクトルでは、大気圧・減圧下で顕著な差は現れなかった。しかし、減圧下では局所的にグラフェンの欠陥に起因するDピークが殆んどない、結晶性の高いグラフェンが合成できていることが分かった。更に、高分解能TEM写真から、グラフェンのドメイン内では格子欠陥の無い単層のグラフェンであることが分かった。

NM_2_Fig1
Fig.1 (a) Optical image of the synthesized graphene on the quartz substrate. (b) Raman spectra of graphene on the quartz substrate synthesized under atmospheric pressure and low base pressure of 0.1 atm. (c) High-resolution TEM image of the synthesized graphene.

K. Murakami et al., Appl. Phys. Lett. 106, 93112 (2015).

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