奈良先端科学技術大学院大学
2014年度 成果事例
ナノ多孔性セラミック分離膜の実用化
【目 的】
セラミック膜は、従来の高分子膜に比べて高い耐久性と溶解しにくい特性を有し、従来の高分子膜では適用が困難だった石油・化学産業向けの利用が期待されている。これまでセラミック膜の薄膜化によって、高い透過性を有する分離膜の製作を行ってきた。本研究では、実用化に向けた当該分離膜の更なる高度化と品質評価のため、膜ナノ細孔構造解析を行なったので報告する。
【成 果】
奈良先端科学技術大学院大学の支援により、当該製品「ナノセラミック分離膜」のナノ細孔構造(品質)を可視化することができた。当該製品は平成26年度京都エコスタイル製品に認定されるなど、実用化に向け、本事業は大きな貢献を果たした。
図1に今回実測したナノセラミック分離膜の断面FE-SEM像を示す。分離層(緻密層)、微粒子で形成された中間層、粗粒子で形成された多孔質支持体層の3層構造を、明確に可視化することができた。また図2に示すSTEM, EDS測定結果より、各層で元素分布の違いが明瞭に分かった。Siは試料最上部の層に分布しているが、今回の試料では比較的深い箇所にも分布が見られた。Alは粒状の層に分布が見られた。Oは試料のほぼ全領域に分布し、Si分布層とAl分布層でOのX線強度の違いが明瞭に分かった。以上から、本研究で用いた手法により、ナノ多孔性セラミック分離膜の詳細構造が評価できると判断された。今後、本研究で確立した評価方法を活用し、当該分離膜の更なる高度化・性能向上が期待できる。
図1 セラミック膜の断面FE-SEM像.
図2 セラミック膜の断面.(A)BF-STEM像, (B) Siマッピング像, (C) Alマッピング像, (D) Oマッピング像.