奈良先端科学技術大学院大学

2012年度 成果事例

一次元方向に伸びたナノワイヤー状自己集積体の構造評価
a大橋春日通商株式会社, b奈良先端科学技術大学院大学
三浦 健a, 池田篤志b

【研究目的】
カーボンナノチューブは様々な応用が期待されているが、ほとんどの溶媒に溶けないためその応用研究の進展が阻まれてきた。可溶化法の一つとして高速振動粉砕法などのボールミル粉砕を用いる方法が挙げられるが、高濃度で可溶化できる反面、カーボンナノチューブが短くなるという問題があった。そこで、本研究では、カーボンナノチューブをより長い状態で可溶化するために、従来の硬い粉砕ボールから柔らかい素材のものに変えて実験を行った。

【成  果】
今回、可溶化剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)を用い、ボールミル粉砕機は、シンキー社製・ナノ粉砕機NP-100を用いた。ジュラコン製のソフトビーズを用いたボールミル粉砕法において、多層カーボンナノチューブ(AMC) の水溶化が可能なことが示された(図1)。その溶液の透過型電子顕微鏡(TEM)像を測定すると、AMC の長さは数 mm であり、長いものでは 3 mm 以上あることが明らかになった(図2)。従来の実験から、硬い粉砕ボールであるジルコニアを用いた粉砕では AMC の長さが平均 0.3 mm までせん断されることがわかっており、それに比べて 10 倍以上長いカーボンナノチューブの水溶液が得られた。未処理の AMC の長さが平均 15 mm であることから、せん断はかなり抑えられていることがわかった。また、バンドル化していないことから、水溶液中でよく分散していることも確認できた。

図1.ソフトビーズで可溶化した多層カーボンナノチューブ(AMC)水溶液の写真
図2.ソフトビーズで可溶化した多層カーボンナノチューブ(AMC)のTEM像
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