東北大学

2012年度 成果事例

原子内包フラーレンの分析と応用
aイデア・インターナショナル株式会社, b東北大学大学院理学研究科附属巨大分子解析研究センター
小松健一郎a, 河地和彦a, 笠間泰彦a, 權 垠相b

【目  的】
イデア・インターナショナル社1)が製造販売しているリチウム内包フラーレン(Li+@C60)は,2010年にその構造が明らかになって以来2),様々な基礎および応用研究が行われている3).従来Li+@C60の品質評価には元素分析やICP分析など,破壊的手法を用いている.また,製品の製造過程で生じる不溶性物質についての知見は極めて少ない.そこで,本研究ではLi+@C60の非破壊的な分析手法と不溶性固体サンプルの詳細な解析について検討した.

【成  果】
Li+@C60と関連化合物の分析は,本学の分子・物質合成プラットフォームが運用している超高感度固体NMRプローブを備えた高磁場核磁気共鳴装置を用いて行った(図1).その結果,非破壊的かつ全量回収が可能で,化合物に含まれる全ての原子種の分析が迅速に行えた(図2).さらに、不溶性固体物質の構造についても詳細な知見が得られた(図3).

図1. 800 MHz核磁気共鳴装置(上)と80 kHzの超高速magic angle spinning (MAS)を実現する 1 mm MASシステム(下).
図2. [Li@C60]+・[PF6]の固体NMRスペクトル.
図3. Li+@C60を含む不溶性固体クラスターの推定構造.

1) イデア・インターナショナル株式会社,http://www.lic60.jp
2) S. Aoyagi, E. Nishibori, H. Sawa, K. Sugimoto, M. Takata, Y. Miyata, R. Kitaura, H, Shinohara, H. Okada, T. Sakai, Y. Ono, K. Kawachi, K. Yokoo, S. Ono, K. Omote, Y. Kasama, S. Ishikawa, K. Komuro, H. Tobita, Nature Chemistry, 2, 678 (2010).
3)最近の研究報告例:Y. Kawashima, K. Ohkubo, and S, Fukuzumi, J. Phys. Chem. A, 116, 8942 (2012), H. Ueno, Y. Nakamura, N. Ikuma, K. Kokubo, and T. Oshima, Nano Res., 5, 558 (2012), Y. Matsuo, H. Okada, M. Maruyama, H. Sato, H. Tobita, Y. Ono, K. Omote, K. Kawachi., and Y. Kasama, Org. Lett., 14, 3784 (2012).

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