千歳科学技術大学

2014年度 成果事例

可視光ワイヤーグリッド偏光フィルターの開発
株式会社 日本アレフ
鏡 好晴

【目  的】
ワイヤーグリッド偏光子とは細い金属線を規則正しく並べたもので、ワイヤーに平行な偏光成分は反射し、垂直な成分は透過する性質を持っており、現在液晶ディスプレイに用いられている吸収型偏光子と異なり、光の利用効率が非常に高い。しかし、ディスプレイデバイスに応用できる十分なサイズ、性能を実現できる製造技術は存在しない。筆者らは、分子量分布の非常に狭い剛直棒状の高分子がスメクチック相と呼ばれる層状の構造を形成し、単純に混合した低分子化合物がこのスメクチック相の層間に分離集積して長周期構造を形成する事を発見した。本研究では、プラズマ表面処理により触媒を付与したプラスチック基板に高分子混合物を薄膜化し、プラズマ表面処理により選択的に低分子化合物をエッチングした後、微細めっき処理することにより可視光ワイヤーグリッド偏光フィルターを製造する技術の開発を目的とした。

【成  果】
プラスチック基板に金属ナノパターンを形成させ、デバイスとして利用するためには基材表面と金属めっき膜の密着性が最も重要な問題となる。筆者らはこれまで微細空間の表面クリーニングを行うために半導体技術で用いられているプラズマを利用した微細めっき法を検討してきた。本研究では図1に示すようにプラスチック基板に対するプラズマ表面EP前処理を行い、プラスチック表面に金属触媒を担持させ、その後、貴金属めっき膜の作成を試みた。その結果、プラズマクリーニング効果、表面粗化効果、窒素官能基形成により密着力の良好な貴金属めっき膜を作成することができた。また、高分子に混合する低分子化合物には適した大きさがあり、このときはほぼ定量的に層状に相分離して長周期構造を形成することが原子間力顕微鏡(AFM)観察によって明らかとなった(図2)。今後、プラズマエッチング条件を検討することにより、低分子化合物を選択的に除去し、除去されることによって表面に出現した金属触媒を利用して微細貴金属めっきパターンの作成を試みる予定である。

CT_2_Fig1
図1 表面状態の変化図

CT_2_Fig2
図2 AFMによる層状の相分離構造の観察

--

©2024 Molecule and Material Synthesis Platform All rights reserved.