奈良先端科学技術大学院大学

2012年度 成果事例

大気圧プラズマを用い改質を行ったPET表面の組成評価
a株式会社魁半導体,b奈良先端科学技術大学院大学
北川貴之a, 田口貢士a, 岡島康雄b,中村雅一b

【研究目的】
昨今の技術開発のトレンドとして、フレキシブルデバイスなどを目標としたロール・トゥー・ロール形式での各種デバイスの樹脂フィルム上への形成がある。ここで重要なフィルムの表面状態の制御に対して、大気圧プラズマを利用した表面処理はその目的を達成する有力な手段と考えられる。今回、大気圧プラズマ処理を施した前後のポリエチレンテレフタラート(PET)の表面をX線光電子分光測定法(XPS)によって測定し、プラズマによる表面状態の変化を確認した。

【成  果】
測定を行うサンプルとして事前洗浄の有無、及びプラズマ処理の有無が異なる3種類のサンプルを用意した(試料1:洗浄ありプラズマなし、試料2:洗浄ありプラズマあり、試料3:洗浄なしプラズマあり)。これらサンプルに図1に示す大気圧プラズマ装置を用いたプラズマ処理と、さらに水酸基の選択的な評価を行うためにシランカップリング剤を用いた水酸基のラベリング処理を施した上で、XPSによる表面の解析を行った。
PETに含まれるC及びOについて、図2の通りC1、C2、C3、O1、O2 とラベルを振ると、XPSの測定結果によるそれぞれの存在比率(図3)から、プラズマ処理によってC1が減少し、Oが増えることが確認され、ベンゼン環が分解されて水酸基が修飾される機構が明らかとなった。また、表面の水酸基の存在比を見積もると(図4)、プラズマ処理によってPETモノマーユニット10個につき約1個の水酸基が存在していることが分かった。プラズマ処理を行う場合、事前洗浄の有無による明確な差は見られなかった。
今回の測定の結果から、大気圧プラズマ処理による表面親水化のメカニズムが従来より明確になった。また、大気圧プラズマ処理に対して表面洗浄の影響はないと判断でき、ウェット処理による洗浄を省略可能であることが明らかになった。

図1. 大気圧プラズマ装置 P500-SM
図2. PETの構造とラベル番号
図3. 各元素の存在割合
図4. PETモノマーユニット当たりの水酸基の存在比
--

©2024 Molecule and Material Synthesis Platform All rights reserved.