信州大学

2014年度 成果事例

摩擦攪拌プロセスによるCNT複合高機能Al合金の作製
長野県工科短期大学校 生産技術科
尾和 智信

【目  的】
カーボンナノチューブ(CNT)はAlなどの金属溶湯との濡れ性が悪く,それを均一に金属マトリクス中に分散させることは難しい.予めCNTと基地金属粉末をボールミル混合した後,摩擦攪拌プロセスを適用することにより,基地金属を溶融させずに固相状態のままでCNTを分散させる複合化技術を開発し,アルミニウム合金の機械的性質の向上を図ることを目的とした.

【成  果】
Al-4.5%Mg合金粉末(ヒカリ素材工業?製,平均粒径60μm)に1.5mass%の割合でCNT (昭和電工?製VGCF?)を添加した複合粉体を三軸方向加振型ボールミルを利用して作製した後,それをAl合金A5083板材に予めフライス加工した所定寸法の溝中に充填し,高速回転ツールを用いて基材とCNT複合粉体を機械的に摩擦攪拌し複合化するプロセスを適用し,Al合金に強化材のCNTを混合分散する一連の工程を検討し,摩擦攪拌プロセスの好適条件を見いだした.得られた複合材のFE-SEM/EDX観察,硬さ試験,引張試験などを行った.
Fig. 1にCNTが添加された複合材の摩擦攪拌部のSEM組織を示す.擦撹拌部は一部に空洞も存在したが比較的緻密で,結晶粒は5~6 ?m以下に微細化していた.繊維状の単体のCNTは殆ど観察されなかったが,そのことはボールミルおよび摩擦撹拌プロセスに於いてCNTが破砕されることに原因すると考えられる.析出物の主相はAl-Mg-C系であった.
Fig. 2に母材およびCNT添加複合材(14AC13と標記)それぞれの摩擦攪拌部と外周部の硬さ分布を,表面直下と摩擦攪拌部につき,水平方向に調べた結果を示す.両者共に母材の硬さ(83 HV)よりやや低下したものの,攪拌部,熱機械的影響部(THAZ)とも同水準の硬さ分布を示した.
Fig. 3に放電加工により摩擦攪拌部から切り出した試験片の引張試験結果を示す.CNT添加せず摩擦攪拌しただけでも,母材に対して強度,破断伸びとも数%向上した.これは結晶粒微細化の効果によると考えられる.CNTを添加し攪拌すると,さらに強度と破断伸びの向上が認められた.

SH_1_Fig1
Fig.1 SEM structure on the stir zone of A5083/CNT composite.
SH_1_Fig2
Fig.2 Hardness distribution of stir zone.
SH_1_Fig3
Fig.3 Sress-strain curves of the stir zones.

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