大阪大学
2012年度 成果事例
擬ゼロホール係数材料を用いた電流-スピン流変換機能
【研究目的】
メモリ素子として着目されるスピントロニクス材料は、その低消費電力化が課題である。正孔と電子の移動度が等しいために、電荷輸送の伴わない純スピン流の発生が得られ、擬ゼロホール係数を有する水素化イットリウム系材料を用い、スピン注入方法の異なる2種類のホール素子で横磁気抵抗を調べた。
【成 果】
合金GdxY1-xを電子ビーム蒸着法によってSiO2基板上に成膜後、水素化してGdxY1-xH2 (x= 0.39)を得た(ホール素子A)。チャネル長は約3 mm である。また、YH2をチャネル領域(チャネル長≒10 μm)とする微小ホール素子は光学リソグラフィ―及び電子ビーム蒸着法で作製した(ホール素子B)。ホール素子A、ホール素子B共に、ローレンツ力由来では説明が困難なほど大きな横磁気抵抗(約7%@5T)が素子A及びB共に観測された。ホール素子Bにおけるホール抵抗は±3 T付近に極値をとる3次関数的となり、横磁気抵抗はYH2固有のローレンツ力由来の値に比べて約100倍大きい正の値となった。ホール素子A,B共にアップおよびダウンスピンのキャリヤが独立に電気伝導に寄与するという二流体モデルを用いて、ホール抵抗及び横磁気抵抗の計算を行った結果、測定結果と良い一致が得られた。
図1 擬ゼロホール係数材料を用いたホール素子 (A) GdxY1-xH2(x≒0.4)磁性体としたホール素子A (B) 擬ゼロホール係数材料YH2非磁性体とし、ソース電極として強磁性体Coとしたホール素子B
図2 擬ゼロホール係数材料を用いた横磁気抵抗比 (A) ホール素子A (B) ホール素子B