名古屋大学

2014年度 成果事例

新規らせん高分子の合成と応用
a金沢大学, b名古屋大学
前田勝浩a,下村昂平a,井改知幸a,石立涼馬a,加納重義a,八島栄次b

【目  的】
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によるエナンチオマーの分離(光学分割)は、光学活性化合物の分取・分析の両方に有効であるため、医薬品の開発研究等の分野において極めて重要な技術になっており、様々なHPLC用キラル固定相が開発されています。HPLCによる光学分割では、先に溶出する成分が後から溶出する成分に重なることがあるため、実際の分析では、少ない成分が先に溶出する方が好ましく、逆に、大量の光学活性体を分取する際は、必要とする成分が先に溶出した方が高い光学純度で得られます。しかし、溶出順序を自在に制御可能なキラル固定相は、これまで開発されていませんでした。本研究では、動的な性質を有する新規らせん高分子を合成して、エナンチオマーの溶出順序を自在に反転(スイッチング)できるHPLC用のキラル固定相の開発を目指しました。

【成  果】
ポリアセチレンの側鎖にビフェニル基を導入した新規ポリアセチレン誘導体を合成し、固体状態で光学活性アルコールと相互作用させることによって、ポリマー主鎖に一方向巻きのらせん構造が誘起されるだけでなく、一旦誘起されたらせん構造が光学活性アルコールを除去した後も記憶として保持されることを見出しました。さらに、このポリマーをシリカゲルにコーティングしてHPLC用のキラル固定相として応用し、光学活性アルコールを含む溶離液をカラム内に通液する前処理により、ポリマーのらせんの巻き方向を反転させることによって、エナンチオマーの溶出順序を自在にスイッチングすることに世界で初めて成功しました。本成果は、英国科学雑誌 Nature Chemistry, 2014, 6, 429として出版されました。

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固体状態で一方向巻きのらせん誘起と記憶が可能なポリアセチレン誘導体を利用した溶出順序の反転が可能なHPLC用キラル固定相の模式図

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