九州大学

2014年度 成果事例

新規高温型燃料電池の開発
九州大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所
Berber Mohamed Reda Ali Abdalla

【目  的】
次世代燃料電池には高耐久な高温無加湿動作が求められている。これまで、触媒担持体として現行材料のカーボンブラック(以下CB)と次世代材料であるカーボンナノチューブ(以下CNT)を用いた場合の高温無加湿条件運転における比較は行われていなかった。そこで燃料電池長時間動作前後の電極触媒ナノ構造を比較・解析することにより劣化原因を突き止め、次世代燃料電池構造の最適化を行うのが目的である。

【成  果】
高温無加湿動作用次世代燃料電池の電極触媒としての利用が検討されているCBとCNTを触媒担持体とする電極触媒を作製し(図1)、実際に燃料電池単位ユニットである膜電極接合体(MEA)をそれぞれ作成した。120℃無加湿条件下で繰り返し電位を掃引する加速度試験を行い、性能の劣化をin situ電圧分極測定により評価し(図1、中央)、さらに試験中の電極触媒をナノテクプラットフォーム支援機器である透過型電子顕微鏡(JEOL社製、JEM-2010)および全自動粉末X線回折装置(リガク社製 、SmartLab)によりex-situ観察行った。その結果、CBを用いたMEAにおいて結晶性炭素に由来するXRDピークがより早くブロード化していることを突き止めた(図2)。ここから、炭素の酸化溶解が劣化の引き金であること、さらにCNTを用いることが耐久性向上に極めて有効であることが明らかとなった。この成果を基にCNTを触媒担持体とする高耐久MEAの開発に成功した(図3)。

KU_2_Fig1
図1.(左・黒枠内)CBを触媒担持体とする電極触媒のTEM像、(右・赤枠内)CNTを触媒担持体とする電極触媒のTEM像、(中央)耐久性試験時の劣化挙動
KU_2_Fig2
図2.CB(左)およびCNT(右)を担持体とするMEAのex-situ XRD測定結果。それぞれ下段が耐久性試験前、上段が12,000サイクル後のXRD回折パターン。
KU_2_Fig3
図3.開発したCNTを触媒担持体とする高耐久MEAの写真

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