奈良先端科学技術大学院大学
2014年度 成果事例
【目 的】
プラズマプロセスは半導体や液晶のみならず、電子材料、自動車向け材料、医療・バイオ向け材料等に幅広く利用されている。その利用において、プラズマの不均一性に起因するプロセス不安定性が大きな課題となっている。我々は、 種々の金属酸化物がプラズマ処理によって組成・構造に変化が生じ変色することを見出しており、 プラズマ状態を安価かつ簡便に評価する新規評価ツール『プラズマインジケータ』の開発を行っている。本研究では、 Ar/O2プラズマ処理におけるプラズマインジケータの変色とそのメカニズムについて報告する。
【成 果】
実験
金属酸化物を主体とする変色インキ組成物を粘着剤付ポリイミドフィルム上に形成し、プラズマインジケータ試料を作製した。Ar/O2プラズマ処理(Ar/O2: 100/0、 95/5、 0/100)は、 平行平板型の高周波プラズマ装置(RF : 13.56 MHz)を用いて、 出力: 100 w、 圧力: 5 Pa、 処理時間: 10 min で行った。
結果と考察
図に各プラズマ処理における試料の変色写真を示した。Arプラズマ処理においては白色から灰色に変色したのに対して、 Ar/O2およびO2プラズマ処理では淡黄色、 黄色に変色した。
各プラズマ処理よって変色した試料の組成・結晶構造を確認するためにXRD測定を行った。その結果、Ar処理した試料は、 金属酸化物の還元反応によって生成したものと考えられる金属の回折ピークが確認された。 一方、O2もしくはAr/O2プラズマ処理したインジケータでは回折ピークがややブロードであることが認められたものの、 処理前後の結晶構造に変化は認められなかった。 次に、 XPS測定による試料の電子的構造について検討を行った。 Arプラズマ処理した試料では、 金属由来のピークが認められ、 XRD測定結果を支持している。 O2およびAr/O2プラズマ処理した試料は処理前の結合エネルギーよりも高エネルギー側にシフトしていることが認められ、 酸化反応が生じていることが分かった。
少量のO2導入が分圧比で小さいにもかかわらず、 Ar/O2 (95/5)プラズマ処理試料の変色は黄色系(O2プラズマの変色)であることから、Arイオンよりも酸素の活性種が強く寄与していることが推察できる。 今後は結晶構造の詳細について検討を実施する予定である。
組成・構造分析に協力いただきました、奈良先端科学技術大学院大学ナノテクノロジープラットフォーム、特に野々口助教、片尾様、岡島様に深く感謝いたします。
学会発表
(1)山川 裕、 75回応用物理学会秋季学術講演会、平成26年9月19日、19p-S9-1.
(2)菱川 敬太、同上、19p-S9-2.
(3)宮? 裕司、 第62回応用物理学会春季学術講演会、平成27年3月13日、 13a-A27-13.