信州大学

2012年度 成果事例

機能性材料の組織およびナノ構造解析
長岡技術科学大学
村松 寛之

【研究目的】
2層カーボンナノチューブ(DWNTs:図1)は優れた物理化学特性を有し、基礎科学から応用分野と幅広い研究者らの注目を浴びている。しかしながら、実用性のあるDWNTsまたはその新規物性の発現を実証するためにも更なる合成技術の開発、物性解明が必要である。本研究ではDWNTsをPeapods構造CNTの構造転換法(2次成長法)による合成を行った。SWNTs内でC60とPt化合物を同時に内包させたPeapodsを原料に利用した。SWNTs内でのPtの触媒作用によりC60同士の融合を促進させることでDWNTs化することを見込み研究を行った。

【成  果】
SWNTsにC60とPtCl3が1次元空間に内包されていることが確認できる(図2(a))。それを600度加熱処理したサンプルが図2(b)であり、低温でDWNTs化していることが分かった。C60のみを内包したサンプルではDWNTsの成長が確認されなかった。またC60の低温での融合と同時にPtナノワイヤーがチューブ内で効率良く形成することが分かった(図2(c))。C60を利用せず、SWNTsにPtCl3のみを内包させ、同条件で加熱処理したサンプルと比較し、効率良くPtナノワイヤーがチューブ内に形成することが分かった。図2(d)はHAADF観察結果であり、白いコントラストは白金ナノワイヤーに対応しており、ナノチューブ内にナノワイヤーが多く成長していることが分かる。PtCl3の内包効果として、C60またはC60から低温合成されたDWNTsの内層がキャップとしての役割を担い、Ptがチューブ外へ拡散することを防ぐために効率的にナノワイヤーが成長したと考えられる。

図1 DWNTsのTEM像と構造モデル
図2 (a)C60とPt化合物を内包したSWNTs、及び600度加熱で発生した低結晶DWNTs (b)、(c)Ptナノワイヤー。(d)PtナノワイヤーのHAADF像
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