信州大学
2012年度 成果事例
機能性材料の組織およびナノ構造解析
【研究目的】
本研究は,材料の微細構造の画像処理による解析手法を開発し,機能性材料の設計に応用することを目的としている.ダブルCs コレクタの搭載された高分解能透過電子顕微鏡(HRTEM)を用いて材料の詳細な観察を実施し,画像処理により解析を行った.
【成 果】
HRTEMを利用して,酸化鉄粒子を担持させた気相成長炭素繊維(VGCF)(図1,2),白金(Pt)粒子を担持させたカップスタック型カーボンナノチューブ(CSCNT)(図3)およびメソ孔を含む活性炭(図4)の高分解能観察を実施した.VGCFは,磁気特性を付加するために酸化鉄を担持させたもので, Cs コレクタ付のHRTEMでしか観ることのできない酸化鉄粒子とVGCFの界面の様子を詳細に分析でき,酸化鉄結晶の結合方位も知ることができた.Pt粒子はCSCNTの炭素六画網面のエッジ部分に選択的に担持され,良く分散しており,燃料電池電極等に利用した場合,微量のPtで効率よく触媒機能が発現できることがわかった.活性炭の観察では,炭素粒子の結合によりメソ孔が形成されている様子がわかるのみでなく,この炭素粒子内に数層の炭素六画網面を壁面としたマイクロ孔が明瞭に観察され,構造を解明することができた.これらの結果から,ナノコンポジット材料やナノ空間の制御など,機能性材料の今後の開発に新たな展開が期待される.
図1 酸化鉄粒子を担持した気相成長炭素繊維(VGCF)のEDX分析
図2 (a) 酸化鉄粒子を担持したVGCFのHRTEM観察像,(b) 酸化鉄粒子部分のFFT像と酸化鉄の結晶シミュレーション
図3 Pt微粒子を担持したカップスタック型カーボンナノチューブのHRTEM観察像
図4 メソ孔とマイクロ孔を含む活性炭のHRTEM観察像