九州大学

2014年度 成果事例

次世代粘着剤の機能設計
日東電工株式会社
下栗 大器

【目  的】
粘着テープは液晶テレビ、スマートフォン、自動車など幅広く使用されており、近年では搭載製品の薄型化、軽量化、高性能化に伴い、異種材料との接合に用いるニーズが高まっている。様々な特徴を持つ材料に対して接着信頼性を担保するためには、材料設計面において粘弾性や架橋などバルク物性の制御に加えて、接着界面における分子レベルでの相互作用や構造制御が重要となる。しかしながら、接着界面の分子構造は解析が困難であり、性能革新の障壁となっていた。そこで本検討ではこれまで解析が困難であった接着界面の分子構造と接着特性との関係を明らかにし、新たな粘着剤設計に反映することを目指した。

【成  果】
ガラス被着体への接着信頼性が異なる粘着テープについて信頼性向上のメカニズム解明として表面粘弾性および接着界面の構造解析を行った(ナノテクプラットフォーム支援機器:環境制御型多機能走査プローブ顕微鏡(AFM)、表面・界面分子振動解析装置(SFG)を利用)。
表面粘弾性評価として行ったAFMフォースカーブより、接着信頼性の良好な粘着剤ではナノレベルでの接着性が向上していることを確認した。さらに接着界面の分子構造をSFG分光に基づいて解析した。接着信頼性が良好な粘着剤では粘着剤組成に含まれる水酸基または、粘着剤表面に吸着した水分子に起因する水酸基のピーク強度が高くなること、またこれらの水酸基の一部は粘着剤表面に対して垂直方向に配向していることを確認した。このように粘着剤表面がガラス被着体に対して相互作用しやすい分子構造をとることが、接着信頼性の向上に寄与したと考えられる。今回の成果は接着信頼性向上の設計指針に繋がる成果であり、今後の粘着剤設計に反映させる。

KU_3_Fig1
図1.粘着剤表面の粘弾性評価と接着界面の構造解析(ナノテクプラットフォーム支援機器利用)
KU_3_Fig2
図2. 粘着剤表面のAFMフォースカーブ測定(左)との和周波分光法に基づいた粘着剤/ガラス接着界面の構造解析(右)

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