大阪大学

2014年度 成果事例

電子ビームグラフト法を用いたフッ素系高分子アクチュエータの開発
早稲田大学理工学研究所a, 大阪大学産業科学研究所b
竹中 怜a, 日名田暢a,柏倉美紀b, 北島彰b, 大島明博a, 鷲尾方一a

【目  的】
高分子電解質膜の両面に金属電極を設置したIPMC (Ion Polymer-metal composites) アクチュエータは、基材である高分子の特性である軽量・柔軟性を有し、小型化が容易なことから、医療応用が期待されている。本研究では、早稲田大学で新たに合成した傾斜機能性高分子電解質膜をIMPCに応用することを検討するため、電解質膜表面に金電極を形成したIMPCアクチュエータを作製するため阪大拠点の設備を利用した。

【成  果】
早稲田大学にて電子ビームグラフト法を用いて合成した新規電解質膜の両面に成膜装置を用いて電極の形成を行うと共に、評価用の4端子デバイスを作製した。
RFスパッタ装置を用いて、膜両面に50 μmほど厚みの電極層を形成し、IPMCデバイスを作製した。作製したIPMCに電圧を印加したところ、Fig.1に示すように動作した。Fig.2に、作製したアクチュエータのIEC ― 変位特性を示す。スチレンをグラフト重合したサンプル (S-IPMC) はIECの増加につれて、変位の低下傾向がみられる。 これはIECの増加、つまりグラフトしたスチレン鎖の増加により柔軟性を失い、結果として変位が低下したと考えられる。一方で、アクリル酸をグラフト重合したサンプル ( A-IPMC) は、IECの増加により、変位が増加しているように見える。アクリル酸は、柔軟性の損失がスチレンと比較して少ないため、IECの増加により変位が増加する効果が見えたものと考えられる。これらの結果から、今回作成したIPMC、特にA-IPMCは、アクチュエータ用途に適すると考えられる。
今回作成した電解質膜の印加電圧に対する動作の大きさは、従来のものと比べても遜色なく動作し、安価に製造できることから、今後の更なる研究により、既存のIPMCにとって代わることが期待できると考えられる。また、今後、傾斜機能材膜を基材としたIPMCデバイスの作製評価を行う予定である。

OS_3_Fig1
Fig.1 IPMC アクチュエーター(10V 印加)
OS_3_Fig2
Fig.2 動作試験結果(IEC – 変位特性)

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