名古屋大学
2014年度 成果事例
【目 的】
弊社は、特殊改質剤(有機ケイ素化合物)を混合した燃焼炎を基材に吹き付けるフレーム溶射により超親水性表面を形成する表面処理システム(T-LOCプロセス)を製品化している。本T-LOCシステムは、超親水表面の他、高い接着性や密着性を示す表面処理手法であり、その持続性も高いという特徴がある(図1)。本支援では、T-LOCシステムのフレーム溶射により形成される処理表面の形状および化学組成を解析することを目的とした研究を行った。
【成 果】
シリコンウエハー基板にT-LOCプロセスを行ったものを原子間力顕微鏡(AFM)により観察した。その結果、T-LOCプロセスにより径数100 nm、高さ数10nmの粒子状の堆積物が観察され(図2a)、処理回数とともに粒子膜状に成長することがわかった(図2b) 。また、この膜を全反射測定法(ATR)を用いたフーリエ変換赤外吸収スペクトル(FTIR)測定により化学官能基分析を行ったところ、炭素鎖由来のピークは全く観測されず、酸化ケイ素(SiO2)由来のピークのみを検出した(図3)。これらの結果からT-LOCプロセスのフレーム溶射によりSiO2ナノ粒子が堆積した高純度のSiO2粒子膜が形成されていることが明らかとなった。
T-LOCプロセスの超親水性および高い接着性と密着性は、様々な基材表面に有機基が完全に燃焼した高純度のSiO2粒子膜が堆積し、表面SiOH基による高表面張力によるものと推察できる。
図1 弊社T-LOCプロセス:有機ケイ素化合物の混合燃焼炎によるフレーム溶射(a)により、様々な基材へ、超親水性、高接着性、高密着性を付与する(b)表面処理技術。また、効果持続性が高い特徴がある。
図2 T-LOCプロセス処理Siウェハ表面のAFM観察像 (a)1往復処理および(b)3往復処理:T-LOCプロセス(フレーム溶射)により径数100 nm・高さ数10 nmのナノ粒子が堆積する。
図3 T-LOCプロセス処理Siウェハ表面のATR-FTIRスペクトル(a)と表面の走査型電子顕微鏡観察像(b):T-LOCプロセスでは、高感度IR測定を用いてもアルキル基由来のピークが観察されず、高純度のSiO2膜が形成されていることがわかる。