利用報告書

アミノ酸誘導体の刺激に応答した結晶化
竹内久志1), 田中正剛1)
1) 名城大学大学院理工学研究科

課題番号 :S-18-NU-0036
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :アミノ酸誘導体の刺激に応答した結晶化
Program Title (English) :Stimuli-responsive crystallization of amino acid derivatives
利用者名(日本語) :竹内久志1), 田中正剛1)
Username (English) :H. Takeuchi1), M. Tanaka1)
所属名(日本語) :1) 名城大学大学院理工学研究科
Affiliation (English) :1) Graduate School of Science and technology、Meijo University

1.概要(Summary )
アルキル鎖を導入したアミノ酸誘導体は、自己組織化ゲル基材など構造性材料として期待される。本研究では、これらアミノ酸誘導体が過冷却状態をとることが見出されたため、その融点と凝固点を評価した。アルキル鎖長に応じて過冷却となる温度域が変化し、特に中鎖アルキル鎖を導入したアミノ酸誘導体は昇温時に凝固する冷結晶化現象が生じた。示差走査熱量計による正確な熱的特性の評価により低分子では報告例の少ない冷結晶化現象を見出すことができた。これらの結果を通じて、温度制御に基づく結晶化による刺激応答性ゲルの開発の足がかりを得ることができた。

2.実験(Experimental)
本実験には示差走査熱量計(SII社製DSC6200)を用いた。合成したアミノ酸誘導体の粉末、あるいは液体をアルミニウム製パンに封入し、窒素雰囲気下において-100~100℃の範囲で10℃/minで温度変化させた。

3.結果と考察(Results and Discussion)
 フェニルアラニンのカルボキシ基をエチルエステル化、アミノ基をアルキルアミド化したアミノ酸誘導体のDSCを測定した(図1)。長鎖アルキル基の場合には融点と凝固点に温度差が生じ、過冷却状態となる正確な温度領域を明らかにすることができた。一方、中鎖アルキル基の場合には、融解後の降温過程では凝固点が現れず、ガラス転移点のみが観測された。ガラス化したアミノ酸誘導体を昇温したところ凝固、および相転移を示すピークが観測された。昇温時の凝固は冷結晶化とよばれ、低分子では報告例の少ない特徴的な温度応答性を見出すことができた。

図1 アミノ酸誘導体のDSC曲線 a) C18-Phe-OEt、 b)C8-Phe-OEt

4.その他・特記事項(Others)
測定に際し、名古屋大学大学院工学研究科 田浦大輔先生、伊藤始氏にご指導いただきました。ここに御礼申し上げます。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。

6.関連特許(Patent)
なし。

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