利用報告書

ニオブ酸リチウム結晶における中赤外線及び紫外線吸収係数の温度依存性
梅村 信弘1) 大沼 佑亮 1)
1) 千歳科学技術大学 理工学部 応用化学生物学科

課題番号 :S-17-CT-0102
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :ニオブ酸リチウム結晶における中赤外線及び紫外線吸収係数の温度依存性
Program Title (English) :Temperature dependence of the absorption coefficients in the mid-IR and near-UV in LiNbO3
利用者名(日本語) :梅村 信弘1) 大沼 佑亮 1)
Username (English) :N. Umemura1), Y. Onuma1)
所属名(日本語) :1) 千歳科学技術大学 理工学部 応用化学生物学科
Affiliation (English) :1) Chitose Institute of Science and Technology

1.概要(Summary )
 ニオブ酸リチウムは、レーザ光の波長変換素子として最も使用されている結晶の一つである。本結晶は周期分極反転デバイスに加工することにより擬似位相整合が可能で、所望の波長に対して非線形光学定数が最も大きいd33成分を利用することが可能である。そのため、1m帯レーザ光を基本光源とした中赤外線発生用波長変換デバイスとして既に実用化されている。本デバイスは温度同調により変換する赤外線波長を同調しており、室温から概ね250℃の温度範囲で設定されている。その場合、4m以上の中赤外線領域におけるレーザ光の発生においては、温度上昇に伴うフォノンによる吸収が大きくなり、その影響を受けることが予想される。そこで本研究は、結晶温度を上げた場合のMgO:LiNbO3結晶の吸収係数の変化について実験を試みた。

2.実験(Experimental)
 本研究では、5mol%酸化マグネシウムドープのニオブ酸リチウム結晶を用いて行った。この結晶はx軸方向にカットされ、その長さは5mmである。その結晶をヒーター上に設置してそのヒーターのブロック部分をFT-IR(SHIMADZU FTIR-8700)にセットし、室温から160℃付近まで温度を変えながら結晶の透過率Tを測定し、その透過率から以下に示される(1)式を用いて吸収係数cm-1)を求めた。
  α=-1/l ln(-A+√(A^2+1/R^2 ))
ここでlは結晶長で単位はcmであり、Rは結晶の表面反射率である。また、A= (1R)2/2/T/R2である。
3.結果と考察(Results and Discussion)
 吸収係数の温度変化の比較結果を図1に示す。波長が長くなるにしたがって結晶温度の上昇に対してフォノンによる吸収係数の増加の度合いが大きくなることがわかった。

  図1 結晶温度と吸収係数の関係(無偏光)

 このことから、LiNbO3結晶は特に4m以上の中赤外線レーザ光発生を目的とした周期分極反転デバイスを設計する場合は結晶の使用温度を上げ過ぎないように配慮した周期長に設計する必要がある。
なお、紫外線領域における吸収係数についても紫外線分光器(Jasco V-670)を用いて同様の計測を行ったが紙面の都合上割愛する。

4.その他・特記事項(Others)
なし

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
 準備中

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