利用報告書

モミガライト燃焼灰分析
奥谷 猛, 巻幡 強, 井場和男, 橋本俊隆
株式会社トロムソ

課題番号 :S-16-CT-0076
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :モミガライト燃焼灰分析
Program Title (English) :Analysis of Momigalite Ash
利用者名(日本語) :奥谷 猛, 巻幡 強, 井場和男, 橋本俊隆
Username (English) :T. Okutani, T. Makihata, K. Iba, T. Hashimoto
所属名(日本語) :株式会社トロムソ
Affiliation (English) :Tromso Co., Ltd.

1.概要(Summary)
モミガライトは籾殻を最大200μm以下に粉砕し、310˚C、1.22×106N/m2で外径5cm内径1.5cm長さ35cmに圧縮成形した固形燃料である。2kgのモミガライトを燃焼させると最高温度868˚Cで800˚C以上の温度が104分継続した。得られた灰はモミガライトの形状を残し、黒灰色であった。灰には95.4%のSiO2を含み、SiO2の10.3%はクリストバライト、85.1%はアモルファスシリカであった。径が7µm以下の浮遊粉塵中の結晶性シリカは発がん性で、その遊離ケイ酸許容濃度は0.025mg/m3である。モミガライトの燃焼では、浮遊粉塵の発生量は少なく、また、結晶性シリカは存在しなかった。モミガライト燃焼灰中に含まれるカリウム成分の影響で、灰が溶融固化した状態で、浮遊粉塵の発生が抑制されていることがわかった。
2.実験(Experimental)
モミガライトはグラインドミル(トロムソ製、TRM-120F)を用いて製造した。径14cm高さ13cmの燃焼室を持つ七輪でモミガライト2kgを燃焼させ、燃焼温度を測定した。得られた灰の分析には千歳科技大の粉末X線回折装置(Rigaku, RINT2500)を用いた。CuK線を用い、管電圧40kV、管電流20mA、グラファイトモノクロメーター使用、走査スピード2˚/min、測定角度2θを3˚~70˚、サンプリング幅0.02˚で測定した。灰中のクリストバライトの定量は、内部標準物質として-Al2O3の(012)ピーク、クリストバライト標準物質として瀬戸窯業原料(株)製のクリストバライトの(101)ピークと希釈剤としてルチル型TiO2を用いた。XRDは走査スピード1˚/min、測定角度2θを19˚~30˚、サンプリング幅0.01˚以外は、灰の分析と同じ条件で行った。モミガライトと灰の形態観察には千歳科技大のSEM(キーエンス社製、VE-8800)を用いた。モミガライト燃焼時の浮遊粉塵中の遊離ケイ酸含有量は、作業環境測定基準1)に則って測定を行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
モミガライト2kgの燃焼では、800˚C以上の温度が104分継続し、最高温度は868˚Cであった。モミガライトに含まれるシリカは非晶質であるが、燃焼温度が800˚C以上でクリストバライトに結晶化する。灰には95.4wt%のSiO2と1.96wt%のK2Oが含まれ、燃焼灰中のSiO2の10.8%はクリストバライトに結晶化していた。灰中のK2Oは、XRDの結果よりKClであり、これがSiO2を溶融し、結晶化を促進することがわかった。燃焼時の浮遊粉塵中の径7µm以下の結晶性シリカは発がん性が有り、規制されている。4kgモミガライトの190分間の燃焼による3.8m3の燃焼ガス中の7µm以下の浮遊煤塵は4.55mgで、クリストバライトなどの結晶性シリカは含まれていなかった。これは、Fig.に示した灰の形態から、非晶質SiO2とKClが共存している箇所にクリストバライトが生成し、KClの作用で燃焼時に溶融し、その後、凝固するので、浮遊煤塵になることはない。一方、籾殻のまま燃焼させる流動床燃焼や浮遊旋回流動燃焼では、籾殻粒子同士が衝突し、細かい粒子になり、クリストバライトは浮遊粉塵に含まれると考えられた。
4.その他・特記事項(Others)
1)日本産業衛生学会, 許容濃度等に関する委員会,粉塵の許容値の暫定値の提案理由書(2011年度),産衛誌,53,204-209(2011).
・謝辞 測定についてご協力いただいた千歳科学技術大学の河野敬一先生に謝意の意を表します。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし
6.関連特許(Patent)
なし

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