利用報告書

α-ガラクトシルセラミドの自己組織化の研究
小山靖人
富山県立大学工学部医薬品工学科

課題番号 :S-20-NR-0007
利用形態 :共同研究
利用課題名(日本語) :α-ガラクトシルセラミドの自己組織化の研究
Program Title (English) :Studies on Self-Assembly of alpha-Galactosylceramide
利用者名(日本語) :小山靖人
Username (English) :Y. Koyama
所属名(日本語) :富山県立大学工学部医薬品工学科
Affiliation (English) :Department of Pharmaceutical Engineering, Faculty of Engineering,
Toyama Prefetural University

1.概要(Summary )
α-ガラクトシルセラミド(GalCer)は、抗腫瘍性天然物であるagelasphin-9bの構造活性相関により、抗癌剤の候補品として開発された合成糖脂質である。GalCerはナチュラルキラー(NK)T細胞研究の標準試料として長く使用されている。
GalCerをリード化合物とする盛んな創薬研究にも関わらず、GalCer類の水中での自己組織化挙動については体系的に調査されていない。そこでGalCer及びそのアグリコンの自己組織化挙動についてCAC、サイズ、モルフォロジー、熱的性質の比較を通し、自己組織化における糖鎖の影響を明らかにすることを目標とした。今回、GalCerおよびアグリコンからなる自己組織化体の形状を評価すべく、協同研究としてTEM測定を実施したので結果を述べる。

2.実験(Experimental)
GalCerは市販品をそのまま用いたが、アグリコンはフィトスフィンゴシンとセロチン酸の縮合により合成した。TEMグリッドとしては, 支持膜付Cuグリッド(JEOL社製、製品番号:1606, 200メッシュ)を使用した。CAC以上に調製したGalCerおよびアグリコンの純水溶液1.0 Lを親水化処理した支持膜付Cuグリッド上にマイクロピペットを用いて滴下した。溶液とグリッドを1分間接触させた後、余分な水分をろ紙で吸い取った。その後、急速凍結装置EM-CPC(Leica Microsstems社製)を利用し液化エタン中にグリッドを浸して急冷し、直ちにクライオTEM測定をJEOL製JEM-3100FEF(TEM)を用いて実施した。

3.結果と考察(Results and Discussion)
GalCerおよびアグリコンが水中で形成する自己組織化体のモルフォロジーをTEMで直接観測し比較した結果、自己組織化構造はガラクトースの有無によって大きく異なることが明らかとなった。また観測された組織のサイズは動的光散乱で得られた流体力学半径の結果と良い一致を示した。以上の結果はこれまでの実験・測定の妥当性を裏付ける重要な証拠であると考えている。今後の研究においても、本装置の活用が極めて有効であることが分かった。

4.その他・特記事項(Others)
謝辞:本測定はNAISTの技術職員の藤原正裕氏, 及び技術補佐員の大野智子氏に御担当いただきました。また科学研究費補助金(JP17H03070)の支援によって実施したものです。この場を借りて, 深く感謝申し上げます。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 宮﨑凌, 小山靖人, M. Nargis, A. B. Ihsan, 令和2年度北陸地区高分子若手研究会, オンライン, 令和2年11月6日.
(2) M. Nargis, A. B. Ihsan, Y. Koyama, Langmuir, 2020, 36, 10764-10771.
(3) M. Nargis, A. B. Ihsan, Y. Koyama, Chem. Lett., 2020, 49, 896-899.

6.関連特許(Patent)
なし

©2024 Molecule and Material Synthesis Platform All rights reserved.