利用報告書
課題番号 :S-16-MS-1052
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :「放射光ナノビームを用いた顕微時間分解XAFS法による固体高分子形燃料電池触媒一粒子の構造速度論解析」
Program Title (English) :Kinetic analysis of a PEFC electrocatalyst particle by time-resolved XAFS using X-ray nano-beam
利用者名(日本語) :松井公佑1)
Username (English) :H. Matsui1)
所属名(日本語) :1) 名古屋大学大学院理学研究科物質理学専攻(化学系)
Affiliation (English) :1) Graduate school of Science, Nagoya University
1.概要(Summary )
固体高分子形燃料電池 (PEFC) は、クリーンな次世代の発電デバイスとして研究が進められているが、カソードでの酸素還元反応の触媒活性が低いため、全体の発電律速となっている。そこで本研究では、XAFS分光法にX線イメージングや速度論解析を取り入れ、膜電極接合体 (MEA) 内部におけるPt触媒の分布や、その触媒活性情報を明らかにすることを目的とした。
2.実験(Experimental)
XAFS実験後の膜電極接合体 (MEA) をPEFCセル中から取り出し、試料の一部を切り出した後、その断面を集束イオンビーム (FIB) により表面処理した。断面のSEM像観察を行って、MEAのモルフォロジーを確認した後、EDSスペクトルを測定し、電解質膜や触媒に含まれる元素の分布をマッピングした。
3.結果と考察(Results and Discussion)
Fig. 1(a) に加速劣化試験 (ADT) 20,000回後のMEA断面のSEM像、(b)にEDSスペクトル、(c)に同一視野でのC-K, F-K, Pt-Lα EDSマッピングを示した。Cは触媒担体に用いられており、カソード・アノードの両電極側でコントラストが見られた。Fに関しては、電解質膜であるNafionに由来する強度分布が見られた。一方、Ptに関しては、カソード触媒の位置でコントラストが確認され、さらに、電解質膜との界面に高いPt密度が確認された。また、電解質膜中にもPtの存在が確認された。これは、加速劣化試験の実施により、Pt触媒が溶出・泳動し、電解質膜中で凝集するPtバンド構造を示唆するものと考えられる。本研究で実施したX線イメージング計測においても同様なPt分布が確認されており、解析結果の妥当性が示された。
4.その他・特記事項(Others)
本研究は、NEDO、科研費(若手(B))の支援を頂いた。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) H. Matsui, N. Ishiguro, K. Enomoto, O. Sekizawa, T. Platinum/Ce2Zr2Ox Catalyst Particles During Oxygen Storage and Release” Angew. Chem. Int. Ed., 2016, 55, 12022.
(2) H. Matsui and M. Tada “Imaging Analysis of Heterogeneous Solid Catalyst by Spatially-Resolved XAFS” J. Vac. Soc. Jpn., 2016, 59, 307.
6.関連特許(Patent)
特になし。







