利用報告書
課題番号 :S-20-JI-0028
利用形態 :技術代行支援
利用課題名(日本語) :あらゆる基材に適用できるコーティング剤の開発とその評価
Program Title (English) :Development and evaluation of coating reagents that are broadly applicable to various substrates.
利用者名(日本語) :瀬戸 弘一,新戸 浩幸
Username (English) :H. Seto, H. Shinto
所属名(日本語) :福岡大学工学部化学システム工学科
Affiliation (English) :Department of Chemical Engineering, Fukuoka University
1.概要(Summary)
糖鎖は生体内で生命現象の認識シグナルとして働いている。癌細胞の転移およびウイルスの感染などは細胞表面の糖鎖とタンパク質間の相互作用が深く関与している。材料表面上に糖鎖をコーティングした糖鎖界面は糖鎖密度が高いため、強い相互作用を形成する。糖鎖界面は特異的な分子認識を発現するため、バイオセパレーション、バイオセンシング、および細胞培養用の材料に応用できる。これまでの糖鎖コーティング手法はステップ数が多く、煩雑であることが問題点であった。また、基材によって糖鎖コーティングの手法が限定されてしまうことが難点である。
茶およびコーヒーなどに含まれているポリフェノールは、分子内に多数のフェノール性ヒドロキシル基を有する化合物である。ポリフェノール配糖体であるルチンは、糖鎖および親・疎水両用の接着機能をもつカテコール基を含有し、それぞれ特異的分子認識部位および接着部位として働く。そこで本研究では、-グルコシル化ルチンを酵素重合し(Fig. 1)、材料表面に糖鎖界面を形成した。
2.実験(Experimental)
ポリ(-グルコシル化ルチン)は酸化還元酵素を用いて-グルコシル化ルチンから調製した。合成石英をポリ(-グルコシル化ルチン)溶液(1 g/L、リン酸緩衝液、pH 7.4)に浸漬し、30oCの暗所に静置した。1時間後、基板を取り出し、洗浄および乾燥させた。ポリ(-グルコシル化ルチン)のコーティングはX線光電子分光法(XPS, AXIS-ULTRA DLD, Shimadzu Kratos)を用いて確認した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
ポリ(-グルコシル化ルチン)をコーティングする前後での基板上のXPSスペクトルをFig. 2に示す。XPS測定より、合成石英上へのポリ(-グルコシル化ルチン)のコーティングを確認した。ポリ(-グルコシル化ルチン)は-グルコシル化ルチンと同様に様々な基板にコーティングでき、そのコーティング性能は高かった。
4.その他・特記事項(Others)
本研究の一部は、科研費(19K05042)の助成を受けて実施されました。XPSの測定において、先端科学技術大学院大学の村上達也技官および木村一郎技官に大変お世話になりました。この場を借りて感謝申し上げます。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
1) Hirokazu Seto, Mao Harada, Hidenori Nagaura, Honoka Taniguchi, Tatsuya Murakami, Ichiro Kimura, Yumiko Hirohashi, and Hiroyuki Shinto, Formation of glyco-functionalized interfaces for protein binding using polyphenolic glycoside, Carbohydrate Research, 492, 2020, 108002.
2) Hirokazu Seto, Mao Harada, Hiroki Sakamoto, Hidenori Nagaura, Tatsuya Murakami, Ichiro Kimura, Yumiko Hirohashi, Hiroyuki Shinto, Visual sensing of proteins using gold nanoparticles coated with polyphenolic glycoside, Advanced Powder Technology, 31, 2020, 4129-4133.
3) 天然および合成ポリフェノール配糖体を用いた生体物質吸着界面の形成, 口頭発表, 瀬戸 弘一, 原田 真緒, 長浦 秀憲, 廣橋 由美子, 新戸 浩幸, 化学工学会第51回秋季大会, 2020.09.24, オンライン.
4) 担体固定化部位および生体分子認識部位をもつ合成高分子の開発, ポスター発表,長浦 秀憲, 瀬戸 弘一, 廣橋 由美子, 新戸 浩幸, 化学工学会第51回秋季大会, 2020.09.24, オンライン.
5) 分子認識界面の形成および分離材料・検出材料への応用, 口頭発表, 瀬戸 弘一, 九州地区高分子若手研究会・冬の講演会, 2020.12.11, 福岡.
6.関連特許(Patent)
なし。