利用報告書
課題番号 :S-18-NR-0013
利用形態 :共同研究
利用課題名(日本語) :かご型シルセスキオキサンを基盤とした元素ブロック高分子材料の開発
Program Title (English) :Development of Element-Block Polymeric Materials based on Caged
Silsesquioxanes
利用者名(日本語) :中 建介、井本 裕顕
Username (English) :K. Naka、H. Imoto
所属名(日本語) :京都工芸繊維大学分子化学系
Affiliation (English) :Faculty of Molecular Chemistry and Engineering, Kyoto Institute of Technology
1.概要(Summary )
現在、有機材料の加工性と無機材料の耐久性を併せ持つ有機無機ハイブリッド材料が注目されている。これは有機成分と無機成分をナノレベルで複合化させたものであるが、単に有機物と無機物を混ぜ合わせるだけでは有機無機界面を制御することは困難である。その中で、かご型シルセスキオキサン(POSS)は、剛直で安定なかご型の無機骨格を有し、かごの頂点にさまざまな有機置換基を導入できることから、有機無機ハイブリッド材料の代表的なビルディングブロックの一つとして注目されている。特に、POSSをポリマー主鎖中に組み込んだ主鎖型高分子は、POSSがもつ熱安定性、透明性といった物性をさらに高めたポリマーとなることが期待される。しかし、そのモノマーとして必要となる二官能性POSSは、POSSの対称性の高さゆえに各頂点が等価な反応性をもつことから、合成が困難とされてきた。これまでに、当研究室は位置選択的加水分解を用いて体対角二頂点に重合官能基を修飾した二官能性POSS1)を報告しているが、その研究例は依然として少ない。一方で、POSSの頂点の一つが欠損した「不完全縮合型POSS」は、従来のPOSS(完全縮合型)よりも低い対称性や結晶性を持ちながらも、同程度の耐熱性を維持している。また、不完全POSSは頂点の欠損部分に三つの官能基をもっているため、このうちの一つだけを選択的に他の分子と反応させることができれば、不完全POSSを用いた二官能モノマーを容易に合成できる。
本研究では三官能性不完全POSSと、一官能性POSSを1:1で反応させることで、主鎖側と側鎖側にそれぞれ、不完全縮合型と完全縮合型のPOSS骨格をもつペンダント型の二官能POSS誘導体を得ることに成功した2)。さらにこれらをモノマーとして、POSS骨格を高度に含んだ主鎖型高分子の合成と、その耐熱性や光学特性といった物性の検討を行った。
Scheme 1. Synthesis of monomers 4.
2.実験(Experimental)
不完全縮合型と完全縮合型のPOSS骨格をもつペンダント型の二官能POSS誘導体の合成はScheme 1に従い行った。POSS骨格の有機置換基がフェニル基またはイソブチル基の三官能不完全POSS (1Ph, 1iBu) にジメチルビニルクロロシランを反応させることで対応するビニル基を三つ有する不完全POSS (2Ph, 2iBu)を合成した。これらと一官能POSS (3Ph, 3iBu) を、白金触媒を用いたヒドロシリル化反応によりそれぞれ反応させ、各種ペンダント型二官能POSS (4Ph-Ph, 4Ph-iBu, 4 iBu-Ph) を合成した。精製はリサイクル分取液体クロマトグラフィーにより行い、同定は各種NMR、およびMALDI-TOFMS測定により行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
Fig. 1 (a) 1H- (400 MHz) and (b) 29Si-NMR (80 MHZ) spectra of 2Ph, 3Ph, and 4Ph-Ph. MALDI-TOFMS spectra (matrix: DCTB (20 mg/mL in CHCl3), cationizing agents: TFANa (1 mg/mL in THF)) of 4Ph-Ph: (c) full spectrum and (d) expanded view.
ペンダント型二官能POSS (4Ph-Ph)の1H-NMR測定においてビニル基を三つ有する不完全POSS (2Ph)および一官能POSS (3Ph)と比較してビニル基の減少とSi-H基の消失が認められた(Fig, 1a)。また29Si-NMR測定の結果からも4Ph-Phの構造が示唆された(Fig, 1b)。MALDI-TOFMS測定の結果、ナトリウム付加体に対応する分子イオンピーク(m/z=2161.2 for C96H98O24Si18Na)が認められたことから(Fig, 1c, d)、4Ph-Phが極めて高い純度で生成していることが確認された。4Ph-iBu, 4 iBu-Phに関してもMALDI-TOFMS測定の結果、ナトリウム付加体に対応する分子イオンピークがそれぞれ確認された。
次に、ヒドロシリル化反応により、各種ペンダント型二官能POSS (4Ph-Ph, 4Ph-iBu, 4 iBu-Ph)をトリシロキサン(5)とそれぞれ共重合させ、各種ポリマー (6-8) を得た。重合の結果をTable 1にまとめる。
Scheme 2 Polymerization of 4 and 6.
Table 1. Results of polymerization.
Polymer Monomers Mn Mw/Mn Yield
(%)
6a 4Ph-Ph, 5a 11700 2.33 48
6b 4Ph-Ph, 5b 7900 2.33 62
6c 4Ph-Ph, 5c 10100 2.00 58
7 4Ph-iBu, 5a 5700 1.75 31
8 4iBu-Ph, 5a 7500 1.66 31
TGA測定により、得られたポリマー(6-8)の耐熱性を検討したところ、いずれも窒素雰囲気下での5%重量減少温度は400℃以上の高い値を示し、POSSがもつ高い耐熱性がポリマーに強く反映されていることが分かった (Fig. 2a)。また、DSC測定を行ったところ、ポリマー(6-8)のいずれにもガラス転移が見られ、ガラス転移温度 (Tg) は、POSSと不完全POSSの置換基の組み合わせによって大きく変化した (Fig. 2b)。特に7と8は、繰り返し単位の組成は同じであるにも関わらず、Tgの値には150℃以上の違いがあり、全く異なる物性を示すことが分かった。
また、ポリマー(6-8)のクロロホルム溶液をガラス基板上にキャストすることにより、いずれも可視光の透過率が90%前後の透明な薄膜が得られた。高濃度のPOSS成分を含むにも関わらず、透明な薄膜が得られたのは、POSSをポリマーの主鎖に組み込むことで、POSSの凝集による白濁が抑えられたためと考えられる。さらに、アッベ屈折計により屈折率を測定したところ、屈折率はPOSS骨格の置換基によって1.48~1.53の範囲で変化することが分かった。
以上の成果は王立協会学術誌Polym Chem誌に掲載され、Front Back Coverに採用された。
Fig. 2 (a) TGA thermograms and (b) DSC curves (second scan) of 6-8 (under N2, 10 °C/min).
4.その他・特記事項(Others)
本研究は、文部科学省科学研究費補助金若手研究(課題番号JP17H05369)により行った。
質量分析測定でお世話になりました奈良先端科学技術大学大学の河合壮先生および技術職員西川嘉子様に感謝致します。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) H. Imoto, R. Katoh, K. Naka, Polym. Chem., (2018), 9, 4108-4112.
(2) 加藤諒一、井本裕顕、中 建介, 「材料シンポジウム」ワークショップ, 平成30年10月16日.
6.関連特許(Patent)
なし







