利用報告書
課題番号 :S-19-NR-0039
利用形態 :技術代行支援
利用課題名(日本語) :がん指向性ナノキャリアの研究
Program Title (English) :Studies on nanocarriers toward cancer targeting
利用者名(日本語) :大谷 亨1)
Username (English) : T. Ooya1)
所属名(日本語) :1) 神戸大学大学院工学研究科
Affiliation (English) :1) Graduate School of Engineering、Kobe University
1.概要(Summary )
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)は熱中性子を利用し、腫瘍細胞を選択的に破壊するがん治療として注目されている。しかしホウ素化合物をがん組織に集積させることが必要であり、dodecaborate型ホウ素クラスターをがん組織へ運搬する薬物キャリアの最適な分子設計指針の確立が切望されている。本研究ではdodecaborate型ホウ素クラスターの1つであるNa2B12Br12をがん組織にデリバリーするキャリアの合成と評価を行った。このキャリア候補として、γ-シクロデキストリン(γ-CD)をhyperbranched polyglycerol (HPG) を修飾し、その上でがん組織への標的指向性を向上させることを目的に葉酸(FA)を導入した。FA-HPG-graft-γ-CDの水溶性試験、サイズ測定およびゼータポテンシャル測定を行い、基礎的な物理化学的性質を評価した。また、等温滴定型熱量(ITC)測定によってNa2B12Br12との結合定数を算出した。
2.実験(Experimental)
無水DMSOにγ-CDを溶解し、NaH, 15-crown-ether存在下グリシドールを滴下し、アニオン開環重合を行うことで、HPG-graft-γ-CD を得た。さらに、FAにボロン酸を修飾したFBAをボロン酸エステル化によりHPG-graft-γ-CDに導入することでFA-HPG-graft-γ-CDを調製した。FA導入数はUV-vis測定により算出した。FA-HPG-graft-γ-CDの質量を明らかにするため、MALDI-TOF-MS測定によるm/zの算出を行った(MALDI-Spiral-TOF-MSを利用)さらにFA-HPG-graft-γ-CDを蒸留水に懸濁させ、フィルター後のろ液を真空乾燥した後重量測定を行うことにより溶解度を測定した。FA-HPG-graft-γ-CDとNa2B12Br12の包接を確認するためにITC測定を行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
MALDI-TOF-MS測定の結果、葉酸分子導入前のHPG-graft-γCDはm/z=4600-4700であった。FA-HPG-graft-γCDのMALDI-TOF-MSスペクトルからはm/z=4572, 5124, 5672の3つのピークが観測された(Fig. 1)。これらのことからm/z=5124及び5672はFA-HPG-graft-γCD由来であるものと示唆された。これらのことから、FA-HPG-graft-γCDは、HPG-graft-γCDに葉酸分子が2-3分子結合したものと算出され、UV-vis測定により算出したFA導入数(約3.3個)と一致した。さらにFA-HPG-graft-γ-CDを蒸留水に懸濁させ、フィルター後のろ液を真空乾燥した後重量測定を行うことにより溶解度を測定した。FA-HPG-graft-γ-CDの超純水に対する溶解度はs=4.77 g/(100mL-H2O)であり、FBA1つあたりに換算すると、FBA単独と比較して約80倍の水溶性を示すことを確認した。ITC測定の結果、結合定数は3.0×105 M-1と算出され、HPG修飾及びFBA導入後も結合定数は105オーダーを維持していた。
Fig. 1 MALDI-TOF-MS spectrum of HPG-graft-γCD (Matrix: DHB)
4.その他・特記事項(Others)
謝辞:本研究は、神戸大学大学院工学研究科博士前期課程2年の杉浦幸作氏の協力により遂行されました。NAISTの網代教授及び技術専門職員の西川 嘉子氏に御担当いただいた。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 杉浦幸作, 大谷 亨, 第36回シクロデキストリン学会 2019年9月6日
6.関連特許(Patent)
なし







