利用報告書

アクチン変異体Asp286ArgおよびAsp288Argの動的光散乱法を用いた機能変調解析
岩佐 充貞
名古屋大学大学院 理学研究科

課題番号                :S-20-NU-0026

利用形態                :機器利用

利用課題名(日本語)    :アクチン変異体Asp286ArgおよびAsp288Argの動的光散乱法を用いた機能変調解析

Program Title (English) :

利用者名(日本語)      :岩佐 充貞

Username (English)     :M. Iwasa

所属名(日本語)        :名古屋大学大学院 理学研究科

Affiliation (English)  :Graduate School of Science, Nagoya University

 

 

1.概要(Summary )

筋肉や細胞骨格の主要な構成蛋白質であるアクチンは、筋収縮や細胞質分裂などの運動機能に中心的な役割を担っている。アクチンは生理的な塩溶液下で繊維状の2重らせん重合体(F-アクチン)を形成し、また重合に伴いアクチン分子内のATPを加水分解するアクチンATPaseが活性化する2つの特徴を有する。我々は、アクチン重合に伴う分子の構造変化とアクチンATPase活性化の機構を原子レベルで調べ、アクチンの動的機能との相関を明らかにすることを研究目的としている。

本研究課題では、F-アクチンの分子間に位置する286番目のアスパラギン酸および288番目のアスパラギン酸をそれぞれアルギニンに変異させたアクチン変異体Asp286ArgおよびAsp288Argを研究材料として用いる。両変異体は通常の重合条件下ではF-アクチンを形成しづらくなる現象が観察されている。動的光散乱法を用いて種々の溶液条件下で両変異体の粒子径・粒子径分布を解析することで、アクチン変異によるF-アクチン形成不全について理解が深められると期待される。

 

 

2.実験(Experimental)

動的光散乱法を用いて、重合条件下でアクチン変異体の粒子径・粒子径分布を解析した。F-アクチン形成不全変異体Asp288Argは組み換え蛋白質を精製して得た。得られた組み換え蛋白質は少量であったが、微量セルを用いる事で限られた試料量(本実験では40µL)での測定が可能となった。

 

利用装置:粒径測定装置ELSZ-2(大塚電子(株)製)

3.結果と考察(Results and Discussion)

動的光散乱法にて得られたF-アクチン形成不全変異体Asp288Argの自己相関関数曲線は、重合条件下と非重合条件下で明らかに異なった。粒子径・粒子径分布解析より、Asp288Argは重合条件下でより大きな粒子径へと変化することが確認された。長さが短いF-アクチンなのか、不規則な凝集体なのかは不明であるが、新しい知見である。もう一つの変異体であるAsp286Argについても調べる意義は大いにあると考えられる。

 

 

4.その他・特記事項(Others)

共同研究者:小田俊郎、前田雄一郎、成田哲博

本課題の実施にあたり、測定装置の選定、測定方法および解析方法は、名古屋大学分子・物質合成プラットフォームの坂口佳充先生および伊藤始先生にご指導いただきました。厚く御礼申し上げます。

 

 

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)

なし

 

 

6.関連特許(Patent)

なし

 

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