利用報告書
課題番号 :S-20-NI-0023
利用形態 :技術代行
利用課題名(日本語) :アナターゼ型酸化チタン薄膜の表面構造と光触媒活性の相関
Program Title (English) :Surface structure of TiO2 thin films influencing on photocatalysis
利用者名(日本語) :本田光裕
Username (English) :Mitsuhiro Honda
所属名(日本語) :名古屋工業大学、物理工学専攻
Affiliation (English) :Nagoya Institute of Technology, Department of Physical Science and Engineering
1.概要(Summary )
光触媒反応の効率向上のために、金属や異種半導体等の担持または添加による電化分離の促進や感度波長の拡大などのアプローチが取られている。[1,2]近年、光触媒材料の表面構造が電荷分離効率を決める重要なファクターの一つであることが分かってきている。[3,4]しかし、欠陥準位、結晶構造、吸着分子との相互作用といった観点でその役割の研究が進められているものの、系統だった理解は得られていない。[5,6]本研究では、表面欠陥構造を有する緻密な酸化チタン薄膜をマグネトロンスパッタ法により作製し、詳細な材料分析と光触媒反応試験を通じて、表面欠陥構造が欠陥準位や光触媒反応速度へ与える影響を検討した。
2.実験(Experimental)
酸化チタン薄膜は、マグネトロンスパッタリング法により作製された。(図1)まず、アセトン洗浄中で超音波洗浄を予め行っておいた合成石英基板を真空チャンバー内に固定し、6×10-4 Paまで真空引きを行った。ターゲットと基板感距離は42 mmとし、ターゲットとしてはチタン金属を用いた。チャンバー内にアルゴン及び酸素ガスを4:1の分圧比でチャンバー内に流入し、全圧1 Pa、電力200 Wでプレスパッタを15分間行った。その後、シャッターを開け、同条件で4時間のスパッタ成膜を行った。成膜した薄膜をチャンバーから取り出した後、表面欠陥構造の除去のために、アルゴンプラズマ処理を施した。プラズマ処理を行った薄膜と行っていない薄膜に対して、X線回折(XRD)、透過型電子顕微鏡(TEM)、フォトルミネッセンス(PL)、光吸収分光、二次電子分光による材料分析を行った。また、薄膜の光触媒効果の評価を、アセトアルデヒドの分解反応により行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
マグネトロンスパッタリング法によりアナターゼ型酸化チタン薄膜が作製され、作製直後の状態の薄膜には表面欠陥構造が生じていることが確認された。また、プラズマ処理によりその表面欠陥構造は除去された。アセトアルデヒドの分解性能を測定したところ、表面欠陥構造を有する薄膜は、無い薄膜の13倍の反応速度を示すことが分かった。(図1)図2に酸化チタン薄膜のEELS測定結果を示す。薄膜表面のEELS測定に基づくと、反応に寄与した表面構造は、アナターゼ型酸化チタンの配位数が減少した構造であると推察される。以上より、配位数の減少に伴って生じた表面欠陥構造が、バンド間に電子トラップ準位を形成し、13倍という著しい光触媒反応速度の増加をもたらしたと結論づけた。
図1 アセトアルデヒドの分解
図2 酸化チタン薄膜のEELSスペクトル
4.その他・特記事項(Others)
本研究の一部は、JSPS科研費 18K14147の助成を受けたものである。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 第25回シンポジウム「光触媒反応の最近の展開」、2020年11月27日、オンライン
6.関連特許(Patent)
なし