利用報告書
課題番号 :S-20-NI-0035
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :アブノーマルNHCを含む非対称ピンサー型Pd(II)錯体の合成と性質
Program Title (English) :Synthesis and characterization of unsymmetric pincer-type Pd(II) complexes containing abnormal NHC
利用者名(日本語) :柳生剛義
Username (English) :Takeyoshi Yagyu
所属名(日本語) :名古屋工業大学
Affiliation (English) :Nagoya Institute of Technology
1.概要(Summary )
N-ヘテロ環カルベン(NHC) 配位子は強いs供与性を持ち、錯形成時に強い金属-炭素結合を形成し、中心金属上の電子密度を増加させ、対応するNHC錯体はさまざまな触媒反応で良好な触媒活性を示している。また、アブノーマルNHCは、通常のNHCよりも中心金属上の電子密度を増加させるため、注目されている。そこで本研究では、末端にアブノーマルNHCを有する三座配位子を支持配位子としたPd(II)錯体を合成し、それらの基礎的特性を各種NMRスペクトル、X線構造解析によって明らかにした。
2.実験(Experimental)
三座型NHC配位子前駆体は、当研究室で独自に合成した1-ブロモエチル-2,3-ジメチルイミダゾリウムブロマイドとピリジルイミダゾールから合成した。得られた配位子前駆体とPd(OAc)2より、対応する溶媒和Pd(II)NHC錯体を合成し、これにLiClを作用させることにより、対応するクロロ錯体を得た。
得られた錯体の各種特性をNMRスペクトル(Bruker AVANCE500US CryoProbe)、X線結晶解析(Rigaku/MSC Mercury CCD)により測定した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
1H NMRスペクトルと元素分析により、三座型NHC配位子前駆体および対応するPd(II)錯体の合成および単離精製ができていることが示された。また、1H、13C{1H} NMRスペクトルのシグナルから、錯体はアブノーマルNHC配位であることが示唆された。これらの錯体について、ナノテクプラットホームを利用してX 線結晶解析を行ったところ、図1に示すように、イミダゾリリデン環の4位の炭素原子でパラジウムに配位しているアブノーマルNHC配位構造を取ることが明らかになった。
図1、錯体のORTEP図
4.その他・特記事項(Others)
なし
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
増井諒, 永田英之, 加藤朝香, 廣重茉裕子, 柳生剛義, 錯体化学会第70回討論会, 2020年9月30日
6.関連特許(Patent)
なし