利用報告書

アミノ酸薄膜試料の円二色性実験
入澤明典1), 高橋淳一2)
1) 大阪大学産業科学研究所, 2) 大阪大学レーザーエネルギー学研究センター

課題番号 :S-16-MS-1078
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :アミノ酸薄膜試料の円二色性実験
Program Title (English) :CD experiments of amino acid films
利用者名(日本語) :入澤明典1), 高橋淳一2)
Username (English) :A. Irizawa1), J. Takahashi2)
所属名(日本語) :1) 大阪大学産業科学研究所, 2) 大阪大学レーザーエネルギー学研究センター
Affiliation (English) :1) ISIR, Osaka University, 2) ILE, Osaka University.

1.概要(Summary )
地球上での生体物質のホモカイラリティ発現機構の探索と解明を目的とし、THz FEL照射を行ったアミノ酸薄膜試料の円二色性実験を行った。生体ホモカイラリティに関する研究は、これまで紫外領域での照射実験が大多数でTHz、遠赤外領域の照射研究は皆無であるが、宇宙空間での放射線は最大フリューエンスがちょうどテラヘルツ領域であるとの報告もあり、分子の振動・回転に関する吸収応答にも密接関連するテラヘルツ領域の照射研究を新たに計画した。
2.実験(Experimental)
THz FEL照射は大阪大学産業科学研究所で行い、アミノ酸試料を主とした様々な薄膜試料に強度、偏光度などを調整した高強度パルスTHz波を照射した。解析実験に当機器センターの円二色性分散計JASCO J-720WIを利用した。利用に当たっては当センターの牧田氏に技術指導頂いた。
3.結果と考察(Results and Discussion)
測定試料はTHz FELの照射条件を変えたものを2種類用意し、計測結果は試料無し(blank)で補正した。スペクトル測定は試料を45度ずつ回転し、円二色性(CD)の有無を調べた。測定波長は165nmから2250nmの範囲でおこなった。結果は一例として図1に示すように無視できない強度でのCDが全ての試料で観測された。問題は試料回転に対する応答で、本来では180度で1周期のスペクトル変化となるところが、本実験結果では全て360度で1周期の変化となっており、単純なCD発現としては説明がつかない点である。今回は照射無しの試料を準備することが出来なかったため、これらの変化が照射によるものなのか、試料由来のものかが区別することが出来なかった。今回の施設利用により、照射実験からCDスペクトル測定までの一連の過程を行うことが出来たので、問題点の改良を含め、次回からの継続実験につなげたい。
4.その他・特記事項(Others)
なし。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 入澤明典, 第30回日本放射光学会年会・放射光科学合同シンポジウム(企画講演), 2017.1.9.
(2) 高橋淳一, 入澤明典, 他, 第30回日本放射光学会年会・放射光科学合同シンポジウム(ポスター), 2017.1.8.
(3) A. Irizawa, Advanced Accelerator & Radiation Physics (invited), Moscow, 2016.12.7.
(4) 入澤明典, FEL-TUS光利用ワークショップ2016(招待講演), 2017.2.1.
6.関連特許(Patent)
なし。

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