利用報告書
課題番号 :S-17-CT-0078
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :アミロイド凝集阻害物質の微量探索システムの開発
Program Title (English) :Development of microliter scale screening system of amyloid aggregation inhibitors
利用者名(日本語) :松井一史, 田井中玲奈, 徳楽清孝
Username (English) :K. Matsui, R. Tainaka, K. Tokuraku
所属名(日本語) :室蘭工業大学大学院工学研究科
Affiliation (English) :Division of Sustainable and Environmental Engineering, Muroran Institute of Technology
1.概要(Summary)
認知症の半数以上を占めるアルツハイマー病は、アミロイドβやリン酸化Tauタンパク質等、凝集してアミロイド線維を形成するタンパク質が脳内で凝集することが発症の引き金となる。我々は量子ドットナノプローブを用い、蛍光顕微鏡下でアミロイド凝集阻害物質を探索する微量ハイスループットスクリーニングシステムの開発を行ってきた。本手法では、アミロイド凝集体の形成やその阻害を蛍光顕微鏡下で直接可視化することが可能であるというメリットがあるが、解像度が低いため凝集体中に含まれる線維一本一本を観察することは不可能である。そこで、本研究では、より解像度の高いTEMでアミロイド凝集体を観察することで、線維形態の詳細な解析を行う。
2.実験(Experimental)
マイクロチューブ内でアミロイドβとタウを37 ℃、24時間インキュベートした。試料溶液を膜張グリッド上に載せ、10分間インキュベートした後に水滴をろ紙で吸い、2.5%グルタルアルデヒドを含むPBSにのせて37 ℃で5分間程度静置し、試料分子を膜面に固定した。グリッド上に試料溶液とほぼ同量の1%リンタングステン酸をたらして試料液を洗い落とした。パラフィルム上に1%リンタングステン酸の液滴を2つ用意し、試料側が水滴に接するように被せ、2つのリンタングステン酸水滴にそれぞれ1秒位ずつ接触させた。ろ紙で余剰の染色剤を吸収し、10分間自然乾燥させ、千歳科学技術大学・分子物質合成プラットフォーム装置の透過型電子顕微鏡(日立、H-7600)を用いて観察した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
アミロイドβおよびタウを量子ドットナノプローブ非存在下(図1上)、または存在下(図1下)で凝集させ、形態の違いをTEMで観察した。その結果、凝集して形成された線維の形状はアミロイドβとタウで類似していることが明らかになった(図1上)。また、量子ドットナノプローブ存在下で凝集させた場合、凝集体に量子ドットが結合している様子が確認された。
図1 アミロイドβおよびタウ凝集体のTEM観察。上段は量子ドットナノプローブを含まない低倍率の顕微鏡写真(スケールバーは500 nm)。下段は量子ドットナノプローブを含む高倍率の顕微鏡写真(スケールバーは100 nm)。
4.その他・特記事項(Others)
謝辞:本研究の遂行にあたりまして、千歳科学技術大学技術員の平井郁乃様には透過型電子顕微鏡の操作方法についてご指導いただきました。本研究はJSPS科研費JP16K14704の助成を受けたものです。この場を借りて感謝の意を表します。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし
6.関連特許(Patent)
なし