利用報告書
課題番号 :S-19-NR-0013
利用形態 :技術代行
利用課題名(日本語) :イオン交換法で分離される二つの性質の異なるポピュレーションのエクソソーム粒子形
状の違いを把握する研究
Program Title (English) :Difference of particle form between two exosome populations separated by
ion exchange method
利用者名(日本語) :瀬尾尚宏
Username (English) :Naohiro Seo
所属名(日本語) :三重大学大学大学院医学系研究科
Affiliation (English) :Mie University Graduate School of Medicine
1.概要(Summary )
全ての体細胞が放出するエクソソームに代表される細胞外脂質二重膜小胞は、多様な物性を持つ集団だと考えられている。我々はこれまでに、マウス細胞傷害性T細胞(CTL)の培養上清からDEAEを用いたイオン交換法でのエクソソームの調製で、低および高塩濃度で溶出される二つの集団に分けられることを明らかにしてきた。低塩濃度で溶出されるエクソソームは、後期エンドソーム由来のタンパク質を豊富に含み、生物活性1)を持つのに対して、高塩濃度で溶出されるエクソソームは、細胞骨格タンパク質やDNAなどの核酸を包埋していることが判明しており、両者では存在するmiRNAの種類や負のゼータ電位幅、さらには膜糖鎖構造に大きな違いがあることが判明している。負のゼータ電位幅や糖鎖構造の違いは、粒子の形態にも影響を及ぼす可能性があり、今回本事業において、クライオTEM撮影を行い、形態の違いを観察した。
2.実験(Experimental)
マウスCTL培養上清を750 kDa MWCO限外濾過により、エクソソームを濃縮し除タンパク後、DEAEセファロースカラムに吸着させた。吸着したエクソソームを0.3 M NaClと0.5 M NaClのステップワイズ法で溶出し、低塩濃度(L-s)および高塩濃度(H-s)溶出の二つのエクソソームを調製した。これら二つのエクソソーム集団を、別に培養液の超遠心法により調製したエクソソームをコントロールとし、クライオTEM撮影を行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
L-s CTLエクソソームは、綺麗な球形を保ったものが多く、直径がほぼ100 nm前後であるのに対して、H-s CTLエクソソームは、300 nm程度の大きな粒子と、100 nm以下の小さな粒子から構成されていることがわかった。またコントロールとして行った超遠心CTLエクソソームは、歪な球形をしているものが多く見られた。L-s、H-s、超遠心エクソソーム共に、脂質二重膜を有する小胞であることもわかった。
近年細胞外小胞研究分野では、細胞外小胞が直径30 nm以下のエキソメアと呼ばれる微小胞、後期エンドソーム由来の直径100 nm前後のエクソソーム、細胞膜から引きちぎれて生成するマイクロベシクルやアポトーシス小体と呼ばれる集団に分離できること、エクソソームはsmall EVと呼ばれDNAを内包しないこと、マイクロベシクルやアポトーシス小体はLarge EVと呼ばれ、DNAを包含していると予測されている2),3)。本研究課題で撮影したL-s CTLエクソソームは、これまでのエクソソームの定義に近い集団であり、H-s CTLエクソソームは、大きな粒子を含みDNAが存在することから、マイクロベシクルまたはアポトーシス小体である可能性が高いように思われる。また本研究課題で、超遠心法で調製したエクソソームの歪な形態が明らかとなったが、、今日においてもエクソソーム調製のゴールドスタンダードは超遠心法であり、このことがエクソソーム研究の進展やエクソソーム創薬への応用を阻む大きな原因になると思えてならない。
4.その他・特記事項(Others)
参考文献
1) Seo N., et al.: Activated CD8+ T cell extracellular vesicles prevent tumour progression by targeting of lesional mesenchymal cells. Nat. Commun. 9: 435, 2018.
2) Jeppesen D.K., et al.: Reassessment of Exosome Composition. Cell. 177: 428-445, 2019.
3) Zhang H., et al: Identification of distinct nanoparticles and subsets of extracellular vesicles by asymmetric flow field-flow fractionation. Nat. Cell Biol. 20: 332-343, 2018.
特記事項
2019年度試行的利用の採択を受けクライオTEM撮影をNAISTにて実施した。
謝辞
ご担当いただいた、NAISTの清水洋教授及び技術職員の藤原正裕氏に深く感謝いたします。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし
6.関連特許(Patent)
なし







