利用報告書

イオン性分子が形成する相のX線構造解析
中 裕美子1), 新井 智2)
1) 東京理科大学理学部第二部化学科, 2) 東京理科大学理学研究科化学専攻

課題番号 :S-19-MS-0042
利用形態 :協力研究
利用課題名(日本語) :イオン性分子が形成する相のX線構造解析
Program Title (English) : X-ray structural analysis of ionic compounds
利用者名(日本語) :中 裕美子1), 新井 智2)
Username (English) :Y. Naka1), S. Arai2)
所属名(日本語) :1) 東京理科大学理学部第二部化学科, 2) 東京理科大学理学研究科化学専攻
Affiliation (English) :1) Department of Chemistry, Faculty of Science,Tokyo University of Science, 2) Department of Chemistry, Graduate school of Science, Tokyo University of Science

1.概要(Summary )
本研究課題では,申請者が合成した新規イオン性化合物の液晶相の構造解析を目的としているが,申請時期が年度終盤であったことから,2019年度においては,オペランドX線回折装置の最適な測定条件の抽出を目標とし実験を行った。測定サンプルは,サーモトロピック液晶化合物なので, 温度制御し液晶相を発現させるために,DCS500 (-180~500 ℃) [refraction]を用いた。加熱上限温度の装置の制約から,今回は反射型測定とし,XRD装置周の光学系・サンプル台・検出器を変化させ,本装置を使用して測定する際の装置条件を決定した。

2.実験(Experimental)
 所属機関で合成したイオン性液晶化合物を持ち込み,オペランド多目的X線回折装置を使用して測定を行った。主な装置構成は,X線源にCu (45 kV,40 mA),光学系にBBHD,検出器にPIXcel3D 2×2(2D),サンプルステージに3-axes(Chi-Phi-Z) Cradleとした。サンプルの温度を制御するためにDCS500(-180~500 ℃)[refraction]を使用した。

3.結果と考察(Results and Discussion)
 測定サンプルは,サーモトロピック液晶化合物で室温以上の最大220 ℃まで加熱する必要があるので,DSC500の温調機を用いた反射型測定について検討を行った。化合物を反射測定用サンプル台に載せ,等方相まで加熱融解させることで,可能な限り表面がフラットになるように詰めた。しかし,温度によってサンプルの高さが変化することが確認された。数種準備した化合物のなかから,今回は2つ選択し測定を行った。一つは他機関にて測定したことがあるサンプルを使って,結果の比較を行った。DSC500による温度制御は,可能な限り,事前に測定した偏向顕微鏡とDSC測定の条件に揃え,結果を照らし合わせた。温度を室温~220 ℃まで変化させ,各温度においてXRD測定を行った。ある液晶相温度範囲において,層法線方向から傾いた規則が存在することがわかった。また,反射型測定の試料台においては,分子が配向する可能性がある。そこで,大気下,真空下,もしくは試料の上に無配向ポリイミドシートを被せて,XRD測定を行った。サンプルの環境によって,分子の配向状態が変化することを捉えることができた。なお,サンプルステージ3-axes(Chi-Phi-Z) Cradleを利用し,サンプル台の角度をChi方向に回転させ測定も試みたが上手くいかなかった。試料の流動性を考えると,サンプル台の回転は慎重に行う必要があり,制約が大きいためである。
 今後,室温において液晶相を発現する化合物においては,透過型測定も検討を行う予定である。

4.その他・特記事項(Others)
JSPS科研費17K14532の助成を受け実施した研究において,詳細な測定を行うために本協力研究を申請し,実施するに至った。実験を実施する際には,分子科学研究所小林グループの方々,および藤原基靖技術職員に支援して頂いた。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。

6.関連特許(Patent)
なし。

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