課題番号 ：S-20-JI-0012
利用形態 ：技術代行支援
利用課題名（日本語） ：イオン液体を反応媒体に用いた燃料電池用電極触媒の開発
Program Title (English) ：Development of electrocatalysts for fuel cell using ionic liquid
利用者名（日本語） ：津田哲哉
Username (English) ：Tetsuya TSUDA
所属名（日本語） ：大阪大学 大学院工学研究科
Affiliation (English) ：Graduate School of Engineering, Osaka University

１． 概要（Summary）
イオン液体にスパッタリングをして得られるPtナノ粒子単分散イオン液体を用いると、カーボンナノチューブを含む様々な炭素材料へ容易にPtナノ粒子が担持できる。最近では、その経験を利用して、金属ナノ粒子担持炭素材料をワンポットで作製する方法（イオン液体－熱分解法）の構築にも成功している。本研究課題では、イオン液体－熱分解法によってPtNiナノ粒子担持多層カーボンナノチューブ（PtNi/MWCNT）を合成する際に使用するNi前駆体の種類や加熱条件がナノ粒子の粒径や結晶構造に及ぼす影響を明らかにするとともに、PtNi/MWCNTの酸素還元電極触媒特性についても調査した。

２．実験（Experimental）
反応媒体であるトリメチルプロピルアンモニウム　ビス（トリフルオロメチルスルホ二ル）アミド（[N1,1,1,3][Tf2N]）は所定の方法で精製したのち、実験に用いた。[N1,1,1,3][Tf2N]にplatinum(II) acetylacetonate (Pt(acac)2)とnickel(II) acetylacetonate (Ni(acac)2)またはnickel(II) bis(trifluoromethanesulfonyl) amide (Ni[Tf2N]2)、MWCNTを添加して均一になるまで混合し、これを窒素雰囲気下、任意の温度・時間で撹拌することにより、PtNi/MWCNTをワンポットで作製した。得られたPtNi/MWCNTはTEM観察、STEM観察（BFおよびHAADFモード）、ICP-AES測定などにより分析した。電極触媒性能の評価は電気化学的有効比表面積や0.90 Vでの酸素還元電流密度によって行った。

３．結果と考察（Results and Discussion）
今回用いた2つのNi前駆体の熱分解挙動は473 Kを超えるまで、ほとんど同じであったが、Ni(acac)2については、その温度を超えるとNi塩の熱分解が進行したものの、粒子の生成を確認することはできなかった。しかし、そのまま573 Kまで昇温して5分間撹拌すると、Ni含有量がおよそ90 at%のPtNiナノ粒子が担持されたMWCNTを合成することができた。Ni含有量は撹拌時間とともに徐々に減少し、最終的に35 at%程度の値で推移した。また、Ni[Tf2N]2を前駆体に用いると、PtNiナノ粒子に含まれるNi含有量は加熱温度が573 Kに到達するまで5 at%にも満たなかったが、573 Kで撹拌を続けると、その値は30 at%程度の値にまで達した。このように前駆体の種類によって、PtNi/MWCNT形成プロセスは異なるが、これを積極的に利用することでMWCNTに担持されるPtNiナノ粒子の組成や粒径がある程度制御できることがわかった。また、PtNi/MWCNTの酸素還元反応に対する触媒活性も変化することがわかった。

４．その他・特記事項（Others）
本研究は、科研費（JP19H02814）の助成を受けて実施しました。試料の分析にご協力頂いた大島義文先生、麻生浩平先生に感謝する。

５．論文・学会発表（Publication/Presentation）
＜論文＞ Yu Yao, Reiko Izumi, Tetsuya Tsuda, Kohei Aso, Yoshifumi Oshima, and Susumu Kuwabata, One-Pot Synthesis of PtNi Alloy Nanoparticle-Supported Multiwalled Carbon Nanotubes in an Ionic Liquid Using a Staircase Heating Process, ACS Omega, 5, 25687-25694, 2020年9月.

６．関連特許（Patent）
該当なし