利用報告書
課題番号 :S-15-KU-0031
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :イオン液体中におけるドナー-アクセプター連結化合物の電子移動反応とダイナミクス
解析
Program Title (English) :Analysis of Dynamics for Photoinduced Electron-Transfer Reactions of Donor–Acceptor Linked Compounds in Ionic Liquids
利用者名(日本語) :田原 弘宣
Username (English) :Hironobu Tahara
所属名(日本語) :長崎大学大学院工学研究科物質科学部門
Affiliation (English) :Division of Chemistry and Materials Science, Graduate School of Engineering,
Nagasaki University
1.概要(Summary )
イオン液体([DEME][TFSI]、Fig. 1)中でのD(ドナー):(Ph)-A(アクセプター): ビオローゲン(V)連結化合物 [Ph(12)V]と参照化合物[Ph(8)AB](Fig. 1)のPh部位の蛍光寿命を測定し、Phの励起1重項からVへの光誘起電子移動反応を求めた。蛍光寿命測定より、イオン液体([DEME][TFSI])での光誘起電子移動反応に及ぼす温度依存性を検討した。
光誘起電子移動反応は温度の上昇に伴い速くなった。この結果は以前行った亜鉛ポルフィリン(ZnP)-A(アクセプター): ビオローゲン(V)連結化合物 [ZnP(4)V] およびカルバゾール(Cz)-A(アクセプター): ビオローゲン(V)連結化合物 [Cz(12)V](Fig. 1)と良い一致を示した。今後は分子性溶媒についても同様な測定を行い、光誘起電子移動反応に及ぼす溶媒環境としてのイオン液体の特性を明らかにするつもりである。
2.実験(Experimental)
Ph-V連結化合物 [Ph(12)V] (Fig. 1)および参照化合物[Ph(8)AB] (Fig. 1)のイオン液体([DEME][TFSI]) 溶液を脱気セルに入れ、freeze-pump and thaw法により脱気後Ar置換した。浜松ホトニクス社製シングルフォトンカウンティング蛍光寿命計測装置を用いて、宇翔製の窒素レーザー(337nm)によってイオン液体([DEME][TFSI])におけるPh(12)VおよびPh(8)ABのPh部位をレーザー光励起し、イオン液体([DEME][TFSI])中でのPhの蛍光寿命について、温度を変化させながら測定した。Phの蛍光寿命は450 nmでの蛍光減衰曲線に対して1成分解析を行い、各温度で求めた。
Fig.1 用いた化合物
3.結果と考察(Results and Discussion)
各温度で測定した寿命の値を表1に示した。AB(0)、V()はそれぞれPh(8)ABとPh(12)Vにおける1成分解析した寿命値を示している。
Ph(8)ABの寿命は温度によってほとんど変化しないが、283Kの結果を除いたPh(12)Vの寿命は温度上昇に伴って、劇的に減少した。これは、温度上昇に伴って、Phの励起1重項からVへの光誘起電子移動反応が促進してCzの寿命が減少したと考えられる。ABとVから求めた光誘起電子移動反応の速度定数(ket)は温度の上昇に伴い、大きくなった。283Kの結果が理由は現在のところ、不明である。
これらの結果は以前行った:亜鉛ポルフィリン(ZnP)-A(アクセプター): ビオローゲン(V)連結化合物 [ZnP(4)V] カルバゾール(Cz)-A(アクセプター): ビオローゲン(V)連結化合物 [Cz(12)V](Fig. 1)における結果を良い一致を示した。
表1. [DEME][TFSI]における寿命(ABとV)と電子移動速度定数
・今後の課題
温度変化の測定の温度を増やすと共に、[DEME][TFSI] 以外のイオン液体や分子性溶媒での蛍光寿命測定を行い、イオン液体でのドナー-アクセプター連結化合物の光誘起電子移動反応の特性を評価する。
4.その他・特記事項(Others)
共同研究者等(Coauthor):
森藤 亨 (九州大学工学部物質科学工学科)
米村 弘明(九州大学大学院工学研究院応用化学部門)
山田 淳 (九州大学大学院工学研究院応用化学部門)
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし
6.関連特許(Patent)
なし







