利用報告書

イオン照射されたスティショバイトの表面構造の解析
松下 正史
愛媛大学理工学研究科生産環境工学専攻

課題番号 :S-17-OS-0033
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :イオン照射されたスティショバイトの表面構造の解析
Program Title (English) :XRD diffraction measurements of ion-irradiated Stishovite
利用者名(日本語) :松下 正史
Username (English) :M. Matsushita
所属名(日本語) :愛媛大学理工学研究科生産環境工学専攻
Affiliation (English) :Dep. of Mechanical Engineering, Grad. School of Science and Engineering,
Ehime University.
キーワード/Keyword    :X-ray diffraction, crystal structure, ion-irradiation, stishovite

1.概要(Summary)
スティショバイト(Stishovite:SiO2)は石英の高圧相であり、自然界では隕石痕などで発見される物質である。本物質は、石英が4配位であるのに対し、6配位の構造をとる。密度は石英の二倍であり、世界で最も硬い酸化物の一つと言われている。また耐薬品性にも優れ、フッ酸にも溶けにくい。
高エネルギー荷電粒子を物質に打ち込むと、pico secondのtime scaleで再外殻電子のエネルギーをはるかに上回るエネルギーが固体内原子へ入射荷電粒子から付与なされ、他の方法では作成不可能な新しい相や、イオントラックと呼ばれるナノスケールの改質領域が形成される。これらの研究は石英に対し古くから行われており、イオン照射によって形成された活性なアモルファス領域をフッ酸処理することで微細貫通穴を形成す試みがなされている。他方、スティショバイトへのイオン照射効果の研究はこれまでになされていない。本研究では高圧合成によって作製したスティショバイトに対し、21 MeVのAu5+を打ち込み、その結晶構造の変化を調査した。
2.実験(Experimental)
【利用した主な装置】
S04 薄膜X線回折装置 リガク “Ultima IV”
【実験方法】
 21MeVのAu5+イオンを照射されたstishoviteと、未照射のstishoviteに対しに対し、入射角一定でのX線回折実験を実施した。X線はCu-Kα用いている。
3.結果と考察(Results and Discussion)
 Fig.1に本実験で得られたXRDパターンを示す。未照射のサンプルのXRDパターンからはスティショバイトに起因するピークのみが観測されるのに対し、照射済サンプルでは2 theta = 20°付近に新しいピークが表れる。この結果は照射によって新しい結晶相が生まれたことを示唆する。2 theta = 20°に強い回折線を出すSiO2の多型としてlow-トリジマイトが知られている。そこで、本サンプルを愛媛大学に持ち帰り、表面をfocused ion beamで切り出し、transmission electron microscopeで観察したところアモルファス領域とトリジマイト領域の形成が確認された。

Fig. 1 XRD pattern of stishovite (blue) and stishovite after irradiated 21-MeV Au5+ (red).
4.その他・特記事項(Others)
該当なし。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 森下凌,松下正史,西山宣正,為則雄祐,大藤弘明,齋藤勇一,第58回高圧討論会,平成29年11月8日.
(2) 森下凌,松下正史,西山宣正,為則雄祐,大藤弘明,齋藤勇一,PRIUSシンポジウム,平成30年2月27日.
6.関連特許(Patent)
該当なし。

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