利用報告書

イソシアニドモノマーの共重合時に発現する得意な不斉増幅現象の機構解明
井改知幸
金沢大学大学院自然科学研究科

課題番号 :S-16-NM-0101
利用形態 :技術補助
利用課題名(日本語) :イソシアニドモノマーの共重合時に発現する得意な不斉増幅現象の機構解明
Program Title (English) :Synthesis of Helical Polymers through Copolymerization of Isocyanide
Monomers Derived from Amino Acids
利用者名(日本語) :井改知幸
Username (English) :Tomoyuki Ikai
所属名(日本語) :金沢大学大学院自然科学研究科
Affiliation (English) :Graduate School of Natural Science and Technology, Kanazawa University

1.概要(Summary)
光学活性なアミノ酸残基を有するポリイソシアニドは、側鎖アミド基間の連続的な分子内水素結合により溶液中でも安定ならせん構造を形成し、側鎖に導入する機能団を高密に配列することができる1,2。本利用者は最近、“光学活性なイソシアニドモノマー (1L)”と“類似構造のアキラルイソシアニドモノマー(1A)”の共重合系で、高度な不斉増幅現象が起きることを明らかにした。具体的には、“極微量(1%)の光学活性ユニットの不斉”が、“99%アキラルユニットからなる高分子鎖全体”へと伝搬し、一方向巻きらせん高分子(poly(1L0.01-co-1A0.99))が定量的に生成することを見出した(Figure 1)。しかし、このような特異な不斉増幅現象の発現メカニズムに関しては、ほとんど解明できていないのが現状である。本機構解明のためには、当該ポリマーの分子量を正確に算出することが不可欠であり、本課題を実施した。

2.実験(Experimental)
【利用した主な装置】
 多角度光散乱検出器(MALS)付ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)システム

【実験方法】
臭化テトラブチルアンモニウム塩を0.25 wt%含むテトラヒドロフラン溶液を溶離液に用いて、poly(1L0.01-co-1A0.99)の絶対分子量測定を行った。

3.結果と考察 (Results and Discussion)
本実験により、poly(1L0.01-co-1A0.99)の数平均分子量(Mn)及び分散度(Mw/Mn)は、それぞれ4.0 x 104 g mol-1, 1.32であることが明らかとなり、平均重合度は約60程度と算出された。共重合反応の仕込み比が1L/1A = 1/99であることから、ポリマー1分子鎖中に光学活性ユニットが全く導入されていないポリマーが存在しうることが確認できた。実際に片巻きらせん高分子が定量的に生成していることを考えると、本結果は、「1Lユニットが導入されたポリマー」だけでなく、「1Aユニットのみからなるポリマー」のらせんの巻き方向もほぼ完璧に制御されていることを示唆している。1Aの単独重合により得られたポリマーをpoly(1L0.01-co-1A0.99)と混合しても、片巻きらせん構造を誘起できないことから、おそらく、重合中にポリマー鎖間の何らかの相互作用が生じ、効率的な不斉増幅現象が発現するものと推察される。

4.その他・特記事項(Others)
1) Cornelissen, J.J.L.M.; Fischer, M.; Sommerdijk, N.A.J.M.; Nolte, R.J.M. Science 1998, 280, 1427.
2) Ikai, T.; Wada, Y.; Takagi, Y.; Shinohara, K. Polym. Chem. 2016, 7, 7057.
本課題遂行にあたり、ご丁寧に指導頂いた竹村太郎先生及び李潔様に厚くお礼申し上げます。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし

6.関連特許(Patent)
なし

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