利用報告書

インフルエンザウイルスゲノムRNAの核酸修飾による機能制御機構の研究
川口敦史
筑波大学医学医療系

課題番号 :S-16-NM-0034
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :インフルエンザウイルスゲノムRNAの核酸修飾による機能制御機構の研究
Program Title (English) :Regulatory mechanism of influenza virus genome function mediated by RNA modification
利用者名(日本語) :川口敦史
Username (English) :Atsushi Kawaguchi
所属名(日本語) :筑波大学医学医療系
Affiliation (English) :Faculty of Medicine, University of Tsukuba

1.概要(Summary)
インフルエンザウイルスはマイナス鎖一本鎖のRNAをゲノムとして持ち、ウイルス由来のRNA依存性RNAポリメラーゼによって、転写および複製される。転写されたウイルスmRNAには、末端にポリA鎖が付加されるのに対し、複製産物には付加されない。しかし、転写と複製のスイッチ機構は明らかにされていない。これまでに、我々はウイルスゲノムのポリA鎖付加配列内に、アデノシン6位の修飾酵素が結合するコンセンサス配列を見出した。そこで本研究では、アデノシン6位の修飾に加えて、他の核酸修飾がウイルスゲノムに導入されている可能性を検討することを目的とした。

2.実験(Experimental)
【利用した主な装置】
 LC-MS/MS装置

【実験方法】
ウイルス粒子および感染細胞からウイルスゲノムを精製し、Nuclease P1/脱リン酸化酵素処理により、ヌクレオシドへと分解する。得られたヌクレオシドをLC-MS解析することで、核酸修飾の有無を明らかにする。修飾されていた場合、試験管内での活性評価系、NMRとAFMでの核酸構造解析、および変異ウイルス作出による表現型解析を行う。

3.結果と考察 (Results and Discussion)
LC-MS/MS(Q-Exactive)を用いて、修飾塩基の網羅解析を行うため、各種マーカーのヌクレオシドの検出条件を検討した。NIMSの先生方にもご協力いただき、いろいろな条件を検討したが、ヌクレオシドが逆相カラムに吸着できず、十分な検出感度を確保できなかった。現在、各種、修飾塩基特異的な抗体を用いた免疫沈降法による検討も開始しているところであるが、予備実験でも良い改善策を得ていない。
一方、細胞由来の因子(宿主因子)のウイルスゲノム認識特異性から、ウイルスゲノムの核酸修飾機構解析へと進めることを念頭に、ウイルスゲノムに結合する宿主因子をLC-MS/MS装置を用いて同定する研究も進めている。現在、組織特異的にウイルスゲノムに結合する宿主因子を複数同定することに成功し、培養細胞系を用いた機能解析の結果、我々が新規に同定した宿主因子は、インフルエンザウイルスの組織特異的な炎症応答制御に関与することが推測されている。今後は、組織特異的な炎症応答とウイルスゲノムの核酸修飾によるその回避機構を解明することを目標としてさらなる解析を進めていく予定である。

4.その他・特記事項(Others)
検出系の検討には、NIMS分子・物質合成プラットフォームの箕輪先生および竹村先生にご指導いただき大変感謝申し上げます。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし

6.関連特許(Patent)
なし

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