利用報告書

エピタキシャルグラフェンの評価
田中慎一郎1), 丸山 隆浩2)、金崎順一1)
1) 大阪大学産業科学研究所 2) 名城大学理工学部

課題番号 :S-15-MS-1039
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :エピタキシャルグラフェンの評価
Program Title (English) :Evaluation of the condition of the epitaxial graphene.
利用者名(日本語) :田中慎一郎1), 丸山 隆浩2)、金崎順一1)
Username (English) :S. Tanaka1), T. Maruyama2), J. Kanasaki1)
所属名(日本語) :1) 大阪大学産業科学研究所 2) 名城大学理工学部
Affiliation (English) :1) ISIR, Osaka university, 2) Department of applied chemistry, Meijo University.

1.概要(Summary )
分子研 BL-7Uにおいて、SiC上に作成した単層グラフェンの角度分解光電子分光の課題を申請し、認められた。UVSORのBL7Uは現在実験希望者が多く、マシンタイムが非常に限られている。効率よく放射光実験を行うには、あらかじめ試料の状態を十分把握しておくことが大事である。2014年後期のマシンタイムにおいて測定がうまくいかず、実は試料が表裏反対であった(目視では分からない)ことがのちに分かった。光電子分光は試料準備に半日から一日程度必要であり試料の状態が悪かった場合には致命的な実験の遅れに結びつく。このようなことを避けるためには、適切な測定手段により試料準備を行うことが重要である。グラフェンの評価方法としては、ラマン分光測定が一般に標準的なものとして使われている。ラマンスペクトルの解析によって、グラフェンの膜厚や、欠陥の濃度を推定することが広く行われている。さらに、ラマン分光は大気中での測定が可能であるため多くの試料の測定ができ、顕微分光を用いることで試料中でのグラフェンの状態の分布を測ることもでき、理想的な手法である。このような観点で、顕微ラマン分光装置の利用申請を行った。
2.実験(Experimental)
顕微ラマン分光装置を用いて、UVSORマシンタイムが始まる月曜日に試料の状態を測定する計画であったが、残念なことに、当該日には既に別のグループの予定が入っていた。また、それ以外の週もやはり装置は予約済みであり、実験を行うことができなかった。
3.結果と考察(Results and Discussion)
先のセッションで述べたように、顕微ラマン分光装置のマシンタイムの準備が遅れ、予定通りの実験を行うことができなかった。しかし、共同研究者(名城大丸山先生)が、別件で確保していたマシンタイムをお借りして、UVSORでの実験後に同一試料の顕微ラマン分光を測定することができた。

上図は、UVSORでの角度分解光電子分光の測定後に、同一サンプルのラマンスペクトルを測定したものである。単層グラフェンのピークはあるものの、強度は弱く、ほとんどがSiC由来のスペクトルとなっている。UVSORの測定結果は、単層グラフェンに由来するバンド分散が非常にきれいに観測されているため、この結果と矛盾する。この理由としては、マシンの扱いに不慣れなためフォーカスが甘く、単層グラフェンよりも深い位置に存在する基盤SiCにピントが合った形でラマンスペクトルを観測したためであると考えられる。今後の課題として、フォーカスを合わせることが重要であるということが分かった。
4.その他・特記事項(Others) なし
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし(準備中)
6.関連特許(Patent) なし

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