利用報告書
課題番号(Number of project) :S-16-TU-0011
利用形態(Type of user support) :技術代行
利用課題名(日本語) :エリシター活性を有する高重合度キトオリゴ糖誘導体の選択的合成
Program Title (English) :Selective synthesis of chitooligosaccharide derivatives
having elicitor activity
利用者名(日本語) :齋藤夏貴, 野口真人, 正田晋一郎
Username (English) :N. Saito, M. Noguchi, Shin-ichiro Shoda
所属名(日本語) :東北大学大学院工学研究科バイオ工学専攻
Affiliation (English) :Department of Biomolecular Engineering, Tohoku University
検索キーワード :キトオリゴ糖,化学-酵素合成,エリシター
1.概要(Summary )
多糖バイオマスの一つであるキチンを分解してできるキトオリゴ糖は,様々な生理活性をもつことが知られている.このなかで,特に重合度が7以上のものは,イネ科植物に対してエリシター活性を示すことが報告されている.エリシターとは,植物の生体防御反応を誘導する物質のことである.エリシターの作用により,植物はファイトアレキシンとよばれる抗菌作用をもつ物質の産生などを行う.エリシターは植物本来に備わっている免疫機能を利用するため,次世代の農薬として注目されている.しかし,目的となる7糖であるキトヘプタオースは水に非常に難溶(1 mg/ml以下)であるため,その合成と構造解析が困難である.
我々は,キチンを加水分解するキチナーゼを触媒として用い,5糖誘導体と2糖の付加反応を行うことで高純度,高選択的なキトヘプタオースの合成に成功している(参考文献).この手法では,反応を円滑に進行させるために,5糖部分はオキサゾリンと呼ばれる活性化した誘導体を用いる必要がある.一方で2糖の側では,種々の置換基の導入が可能であるが,その検討はされていなかった.そこで本研究課題では,直接誘導化が困難なキトヘプタオースの誘導体合成を,予め誘導化した2糖誘導体を用いることで,様々な置換基をもつキトヘプタオースの合成を行った.
2.実験(Experimental)
100 mM Na2CO3 buffer (pH 10.6) 300 µl に5糖のオキサゾリン誘導体(3.0 mg, 3.0 µmol, 終濃度10 mM)と種々の2糖誘導体(1eq.)を加え,溶解させた.この混合溶液を30°C, 10分間プレインキュベートし,そこにキチナーゼ溶液(終濃度 25 µg/ml)を加えて反応を開始した. 90°C, 5分間の加熱により酵素を失活させた.失活後の反応液を遠心分離 (9510 g, 5分間)し,上清を除去して沈澱物を得た.得られた沈澱を 50% MeOH aq. 600 µlに懸濁後,遠心分離 (9510 g, 5分間)を行い,上清を除去する操作を5サイクル行なった.残渣を凍結乾燥し,得られた白色固体の収量測定および東北大学ナノテク融合技術支援センターが管理・運営するJNM-ECA 800を用いてCP/MAS測定 (2.5 mm CP/MAS probe,20 kHz)により評価を行った.
3.結果と考察(Results and Discussion)
各生成物のCP/MAS測定を行った結果,糖骨格の構造について,過去に得られていたキトヘプタオースと同様のシグナルが得られたことから,いずれの生成物においても,位置異性体の生成は検出されなかった.このため,本手法によるキトヘプタオース誘導体合成法は,種々の置換基を有するキトヘプタオースの合成に有効であることが示された.
4.その他・特記事項(Others)
CP/MASを測定して頂きました巨大分子解析研究センターの吉田慎一朗技術専門職員に深く感謝いたします.
参考文献:Naoki Yoshida, Tomonari Tanaka, Masato Noguchi, Atsushi Kobayashi, Kumiko Ishikura, Tatsuya Ikenuma, Hiromu Seno, Takeshi Watanabe, Michinari Kohri and Shin-ichiro Shoda, Chem. Lett. 2012, 41, 689-690,
doi:10.1246/cl.2012.689
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
現在論文執筆中
6.関連特許(Patent)
なし