利用報告書
課題番号 :S-20-NU-0036
利用形態 :技術代行
利用課題名(日本語) :オイル成分のねずみ鋳鉄内部への注入と外部放出の検討
Program Title (English) :
利用者名(日本語) :松村 光崇
Username (English) :M.Matsumura
所属名(日本語) :東海イオン株式会社
Affiliation (English) :
1.概要(Summary )
現在、自社製品を製作し新事業の立ち上げの最中である。自社製品の材料にネズミ鋳鉄を使用し、素材内に匂い成分が含まれるオイルを浸透拡散する事に成功した。製品は水中で使用する為、匂いの拡散を確認する必要があり、経時変化の追跡と素材の表面観察を行う。
2.実験(Experimental)
ネズミ鋳鉄の外表面、内部断面の細孔状況と注入したオイルの状況を、走査型電子顕微鏡(JEOL社製JSM-7500F)、大気圧SEM(ナノバイオ分子合成・超解像解析評価システム・日本電子製JASM-6200ClairScope)で観察した。
また熱重量測定装置(SII社製TG/DTA6200)を使い、オイルを加熱する事によって、ネズミ鋳鉄に含浸したオイルが熱分解された事を重量の変動で分析した。
ねずみ鋳鉄を水中浸漬した際のオイル・匂い成分の溶出経時変化を、水中の有機物濃度(COD)を測定し評価した(共立理化学研究所(株)水質測定試薬セットを用い、吸収分光光度計(Shimadzu社製UV-1800)により定量)。
測定したい水試料にCOD検出試薬を加えると、水中の有機物量に応じて色の変化が起るため、これを利用し測定した。
COD検査試薬にて変色した水試料
3.結果と考察(Results and Discussion)
ねずみ鋳鉄の外表面、内部断面の細孔状況を走査型電子顕微鏡、大気圧SEMで検査した結果などを以下に掲げる。
・走査型電子顕微鏡写真
写真から分かるように表面が多孔質になっている事、これによって内部に、オイルが浸透・拡散される構造である事が理解できる。
・熱重量測定(TGA)による含浸量評価
オイルは300℃を超えると熱分解による重量減少が明確にはじまり、500℃に到達すると全て気化する。
ネズミ鋳鉄に含浸したオイルの熱分解による重量の変動については、含浸量が少なく正常な値が出なかった。今後、この課題には評価数を増やす事で解決できると考えられる。
・ネズミ鋳鉄から水中へのオイル溶出量COD評価
表から、ネズミ鋳鉄からオイルが時間経過とともに溶出している事が確認できた。
最初の1分間に、64ppm程度の高い濃度の溶出、その後は10ppm程度の一定量が20分を超えても溶出する事が分かった。これは継続的に匂い成分が放出されている事を示し、この結果により弊社の実験の目的である、ネズミ鋳鉄に含浸したオイル・匂い成分が水中で拡散することが確認された。
4.その他・特記事項(Others)
本課題は令和元年度分子・物質合成プラットフォーム試行的利用課題として行った。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。
6.関連特許(Patent)
なし。