利用報告書

オニウム塩とエポキシ樹脂との反応形態の解明
横山 司
名古屋ファインケミカル株式会社

課題番号 :S-16-NU-0019
利用形態 :技術代行
利用課題名(日本語) :オニウム塩とエポキシ樹脂との反応形態の解明
Program Title (English) :
利用者名(日本語) :横山 司
Username (English) :T. Yokoyama
所属名(日本語) :名古屋ファインケミカル株式会社
Affiliation (English) :

1.概要(Summary )
電子材料用フィルムを接着するエポキシ樹脂は高温での硬化反応が必要であり、ポリイミド等の耐熱性フィルムが幅広く使用されてきたが、低温で硬化でき、柔軟性も兼ね備えたエポキシ接着剤があれば、省エネ、生産性向上だけでなく、汎用性フィルムを使用も可能となる。ナゴヤファインケミカル株式会社では、本課題に対してエポキシ樹脂とオニウム塩を適切に組み合わせた系において、従来にない低温で硬化反応が可能であると共に、硬化後の接着強度、柔軟性に優れた接着剤組成を見いだすことに成功した。本接着技術における反応機構についてはまだ十分に理解できているとは言えないため、反応メカニズムを明確にし、硬化条件との関係を把握することで、さらなる性能向上させた接着剤の開発に結びつくものと期待される。

2.実験(Experimental)
・エポキシとオニウム塩の組合せを変えた試料のDSC測定を行い、温度により複数の反応が起こる状況を確認した。
・DSC結果を基に、各種組合せのエポキシ接着剤について温度,時間を変えて硬化試料を作製し、FT-IRおよびNMR測定により反応の進行状況を評価した。
・反応速度論的評価を行うため、モデルエポキシ接着剤組成を用いて、昇温速度を変えたDSC測定を実施した。
使用機器:
示差走査型熱量測定装置(SII社製DSC6200)
フーリエ変換型赤外分光装置(JASCO社製FT-IR680PLUS)
500MHzNMR装置(Agilent社製UNITY INOVA 500)

3.結果と考察(Results and Discussion)
①代表的なエポキシ化合物2種と反応解析用の1官能性エポキシ化合物に対しオニウム塩含有量を変えたエポキシ組成物を作製し、DSC測定により反応開始温度、発熱反応の状況を把握し、複数の反応が段階的に起こることを確認した。
②上記試料について、DSC測定結果に基づき処理温度、時間を変えて硬化させた試料を作製した。各試料について、FT-IR測定を行いスペクトル変化を追跡し、試料間の反応状況の違いを把握した。
③上記の各種熱処理試料を重クロロホルムに溶解し、NMRを測定した。2官能性エポキシは反応により不溶化が進むので、1官能性エポキシ化合物を主に解析を進めた。1H NMRでは、反応変化を十分に追跡できなかったが、13C NMRにより、反応の進行を捉えることができた。
④1官能性エポキシ化合物を用い、DSC昇温速度を変えて反応追跡を行った。速度論的解析を加えて、複数の反応の進行状況を把握した。
以上の取組みにより、エポキシ接着剤の反応機構の概要を把握するとともに、解析を深化させるための手法を確認できたので、エポキシ接着剤の性能向上への取組に繋げていく。

4.その他・特記事項(Others)
本課題の遂行にあたり、名古屋大学坂口特任教授、近藤一元氏、伊藤始氏の協力を得た。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし

6.関連特許(Patent)
(1) 関連特許出願済み(公開前)

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