利用報告書

カチオン欠損型アルミナを用いた酸素貯蔵材料開発とNMRによるカチオン欠損量の評価の試み
朝倉博行
京都大学大学院工学研究科

課題番号 :S-20-JI-0017
利用形態 :技術代行支援
利用課題名(日本語) :カチオン欠損型アルミナを用いた酸素貯蔵材料開発とNMRによるカチオン欠損量の評価の試み
Program Title (English) :Feasibility study of quantification of cation defect of aluminum oxides for the development of oxygen storage materials by 27Al NMR
利用者名(日本語) :朝倉博行
Username (English) :H. Asakura
所属名(日本語) :京都大学大学院工学研究科
Affiliation (English) :Kyoto University

1.概要(Summary)
自動車排ガス浄化触媒の中でも三元触媒は一酸化窒素の還元と一酸化炭素及び炭化水素の酸化を同時に起こすことで排ガスの無害化を実現している.三元触媒には酸素雰囲気変動時の酸素濃度を制御するため,雰囲気に応じて酸素を吸放出する酸素貯蔵材料であるCeO2-ZrO2固溶体が助触媒として用いられている.実用されている酸素貯蔵材料にはCeなどの希少元素が用いられているため,その代替が求められている.
申請者らはFeをγ-Al2O3にドープした単純な金属酸化物が安定な構造を保ちながら酸素吸放出能を示すことを見出している.一方で,熱的な安定性に欠けるため,従来知られているLaドープによる高温安定性の付与を試みているが,その構造についてはまだ議論が続けられている.一方で,Feドープは母材となるAl2O3の構造にも影響を受けていることが示唆されている.そこで,Laドープ前後のAl2O3のAlの配位数変化をNMRで定量することにより,LaドープによるAl2O3の構造変化と,Feのドープ挙動の関係を明らかにすることを試みた.

2.実験(Experimental)
AVANCE III 500 (Bruker BioSpin Inc, 500MHz)および固体プローブ(BL4VTN)を用い,酸化アルミニウム試料の27Al/MAS NMR測定を行った.積算回数3000回,サンプル回転数15 kHz, 10 kHz,緩和時間1 s,1M塩化アルミニウム水溶液にて外部標準法によるキャリブレーションを行った.

3.結果と考察(Results and Discussion)
触媒学会参照触媒のJRC-ALO-4,JRC-ALO-7,日本軽金属のC20の各種γ-Al2O3およびこれらに2–10 wt%相当のLaをドープした粉末試料について,27Al NMR測定を行った.γ-Al2O3は小さなもので結晶子径が15 nm程度であり,Laの表面への吸着による比率の変化を予想していたが,Laドープ前後のAl NMRについて,70 ppm付近の四配位構造のAlと9 ppm付近の六配位構造のAlの比率は1:3とほとんど変化しなかった.また,異なるγ-Al2O3間でも有意な差は見受けられなかった.

4.その他・特記事項(Others)
本研究の一部は、科研費(19H02515)および本研究は文部科学省元素戦略プロジェクト<研究拠点形成型>(課題番号JPMXP0112101003)の助成を受けて実施されました.また,代行測定および解析を行っていただいた宮里朗夫様に深く感謝いたします.

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし.

6.関連特許(Patent)
なし.

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