利用報告書

カルコパイライトナノ粒子の発光特性の評価
葛谷 俊博(1),渡辺健斗(2),Chen Shijia(2),山谷優太(2),濱中 泰(2)
室蘭工業大学(1),名古屋工業大学(2)

課題番号 :S-16-NI-15
利用形態 :共同研究
利用課題名(日本語) :カルコパイライトナノ粒子の発光特性の評価
Program Title (English) :Photoluminescence properties of chalcopyrite nanoparticles
利用者名(日本語) :葛谷 俊博(1),渡辺健斗(2),Chen Shijia(2),山谷優太(2),濱中 泰(2)
Username (English) :T. Kuzuya(1), K. Watanabe(2), S. Chen(2),Y. Yamatani(2), Y. Hamanaka(2)
所属名(日本語) :室蘭工業大学(1),名古屋工業大学(2)
Affiliation (English) :Muroran Institute of Technology(1),Nagoya Institute of Technology(2)

1.概要(Summary )
I-III-VI2族のカルコパイライト系半導体ナノ粒子は,CdSeナノ粒子に代わる有毒元素フリーな蛍光ナノ粒子として期待されている材料である。CdSeナノ粒子と同様に,バンドギャップが大きいZnSでキャッピングすると発光効率が向上するといわれている。しかし、Znをドープしたカルコパイライトナノ粒子においても発光効率が向上することが分かっている。また、ZnSキャップ層を成長させる段階でZnドーピングが生じることも指摘されている。本研究では、カルコパイライト型のAgInS2ナノ粒子について,Znドーピングが生じないZnSキャップ層の形成条件を探索した。

2.実験(Experimental)
液相法で合成した平均粒径3.4 nmのAgInS2ナノ粒子の周りを薄いZnS層でキャッピングし、コアシェル型ナノ粒子を作製した。このときZnSキャップ層を形成させる温度を変化させた。得られたナノ粒子の結晶構造と元素組成をXRDとEDXにより評価した。紫外可視近赤外分光光度計JASCO V-570を用いて吸収スペクトルを測定した。PLスペクトル・PL寿命測定装置を使用して発光減衰曲線を測定し、発光寿命を評価した。また、発光量子効率を求めた。

3.結果と考察(Results and Discussion)
ZnS層を成長させる温度が410K以下の場合にはAgInS2ナノ粒子の格子定数は変化しなかったが、420K以上では格子定数は減少し、温度の上昇と共にZnSの格子定数に近づいた。また、430K以上ではZnの含有量が増加した。この結果は、430Kを越えるとAgInS2ナノ粒子中にZnが拡散し、ZnSとAgInS2の混晶が形成されることを示している。410K以下ではコアシェル構造ナノ粒子が得られると考えられる。
ZnSキャップ層を持たないAgInS2ナノ粒子の発光量子効率(PL-QY)は約8%であった。図1にZnS層の成長温度と発光量子効率の関係を示す。390KでZnS層を成長させた場合に発光量子効率は最も高く、約13%であった。この場合のZnSシェルの厚さは約0.3 nmと見積もられた。これは、1 MLに相当する。この結果は、ZnS層でAgInS2ナノ粒子の表面を完全に被覆すると、従来から知られていたように表面欠陥がパッシベートされ、非輻射再結合確率の減少に寄与することを示している。
混晶ナノ粒子となる430K以上で得られたナノ粒子の発光量子効率は、ZnSキャップ層を持たないAgInS2ナノ粒子と同程度まで減少した。発光量子効率の低下は、ZnSシェルが消滅し、非輻射再結合中心となる表面欠陥が生成したためと考えられる。
4.その他・特記事項(Others)
なし
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 渡辺健斗,Chen Shijia,濱中 泰,葛谷俊博,日本物理学会第72回年次大会,平成29年3月19日
6.関連特許(Patent)
なし

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