利用報告書

カルボキシル基を導入した非平面パイ共役分子の集積構造に関する研究
山口真生1), 久木一朗1)
1) 大阪大学大学院基礎工学研究科

課題番号 :S-20-NR-0029
利用形態 :技術代行
利用課題名(日本語) :カルボキシル基を導入した非平面パイ共役分子の集積構造に関する研究
Program Title (English) :Research on molecular assembly of non-planar pi-conjugated molecule with
carboxy groups
利用者名(日本語) :山口真生1), 久木一朗1)
Username (English) :M. Yamaguchi1), I. Hisaki1)
所属名(日本語) :1) 大阪大学大学院基礎工学研究科
Affiliation (English) :1) Graduate School of Engineering Science, Osaka University

1.概要(Summary )
構造や機能のファインチューニングが可能な有機分子を構成要素に用いた多孔質構造体の研究が活発に行われている。特に水素結合などの可逆的な分子間相互作用を用いて、規則的にパイ共役部位を配列・連結させることによって構築した多孔質フレームワークは、特定の化学種の可逆的な吸着脱離と電荷輸送の両方を同時に示す複合機能性の多孔質材料として興味が持たれる。これまでに、水素結合連結部位としてカルボキシフェニル基を周囲に導入したジベンゾクリセン誘導体をビルディングブロックとして合成し、自己集合させることによって先に述べた電荷輸送特性を示す複合機能性多孔質構造体を創出できることを見出した(図1)。

図1.カルボキシフェニル基をもつ誘導体CP-DBCが分子間水素結合を経て形成する多孔質構造体.

本課題では、周辺置換基を伸長させた誘導体のMALDI‐Spiral‐TOF‐MSによる高分解質量分析の技術代行を申請した。

2.実験(Experimental)
ジベンゾクリセン骨格の4か所に4-カルボキシ-1,1′-ビフェニル基を導入したビルディングブロック分子 CBP-DBCを合成した(分子量:1113.234,組成式:C78H48O8)。CBP-DBCは、汎用の極性溶媒に対する溶解性が予想以上に低く、構造の十分な同定が困難であった。そこで、高分解能質量分析の技術代行を申請した。

3.結果と考察(Results and Discussion)
サンプルはジメチルスルフォキサイドで溶解したものをクロロフォルムで希釈して用いた。マトリックスはDCTB(20mg/ml in CHCl3)、キャリブレーションサンプルは PEG1000(クロロフォルム中、濃度:1㎕/㎖)、カチオン化剤TFANa(THF中、濃度:1mg/ml)を使用した。その結果、目的の分子に対応する[M+]が検出され、観測された精密質量は、理論値とよい一致を示した。別途測定した1H NMRスペクトルとも矛盾なく、本申請課題によって、目的の構造をもつ化合物が合成されたと結論付けた。

4.その他・特記事項(Others)
なし

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) 山口真生, 久木一朗, 日本化学会第101春季年会, 令和3年3月20日

6.関連特許(Patent)
なし

©2024 Molecule and Material Synthesis Platform All rights reserved.