利用報告書

カーボンドットの構造と発光特性の評価
井村考平1)(1) 早稲田大学)

課題番号 :S-20-MS-1074
利用形態 :施設利用
利用課題名(日本語) :カーボンドットの構造と発光特性の評価
Program Title (English) :Evaluation of carbon dot structure and photoluminescence characteristics
利用者名(日本語) :井村考平1)
Username (English) :K. Imura1)
所属名(日本語) :1) 早稲田大学
Affiliation (English) :1) Waseda University

1.概要(Summary )
 多環芳香族炭化水素やグラフェンなどから構成されるカーボンドットは,生体相溶性かつ低毒性であることから,バイオイメージングへの応用が期待されている。我々は,電子線誘起化学反応を利用してカーボンドットを空間選択的に作製する手法を開発した。また,カーボンドットの発光の増強法として,金ナノ周期構造に励起される表面プラズモン共鳴とフォトニック効果の利用を考案した。
 カーボンドットと金ナノ周期構造のハイブリッド構造を作製すると,カーボンドットからの発光がプラズモンとフォトニック効果により増強されることが明らかとなった。しかし,プラズモンによる発光増強が,励起過程または放射過程のいずれに起因しているかは未解明であった。本課題では,蛍光寿命測定により,これを解明することを目的とした。発光の時間分解計測の結果,ハイブリット構造では,発光寿命の短縮が確認され,発光増強は放射増強に起因することが明らかとなった。
2.実験(Experimental)
 カーボンドットの透過型電子顕微鏡による観察とカーボンドットと金属ナノ構造とのハイブリッド構造の蛍光寿命測定を計画し,これを分子科学研究所機器センター設置の電界放出形透過電子顕微鏡とピコ秒レーザーにより実施した。透過型電子顕微鏡および蛍光寿命測定用の試料は,あらかじめ利用者の研究室で作製した。また,ハイブリッド構造の基礎光学特性は,利用者の研究室で測定評価した。
3.結果と考察(Results and Discussion)
 カーボンドット膜およびカーボンドットと金ナノ周期構造のハイブリッド構造の発光スペクトルを図1に示す。励起波長は,375 nmである。図から,波長
Figure 1. (a) Photoluminescence spectra of carbon dots film (black curve) and carbon dot gold nanostructure photonic crystal structure (red curve). Excitation wavelength: 375 nm.

400 nmから700 nmにわたる広い波長範囲で発光が観測されることがわかる。また,ハイブリット構造では,カーボンドット膜に比べて,発光が増強することが明らかとなった。発光増強が,励起過程または放射過程のいずれに起因するかを明らかにするために,発光の時間分解計測を行った。その結果,ハイブリット構造では,カーボンドット単体に比べて発光寿命の短縮が確認された。このことは,放射過程において,発光が増強されること示す。
4.その他・特記事項(Others)
なし。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
(1) Y. Kamura, K. Imura, “Photoluminescence from Carbon Dot-Gold Nanoparticle Composites Enhanced by Photonic and Plasmonic Double Resonant Effect”, ACS Omega 2020, 5, 29068–29072.
6.関連特許(Patent)
なし。

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