利用報告書

カーボンナノチューブの熱処理実験
山崎悟志(先端素材高速開発技術研究組合)

課題番号 :S-20-SH-0010
利用形態 :共同研究型支援
利用課題名(日本語) :カーボンナノチューブの熱処理実験
Program Title (English) :Heat treatment of carbon nanotubes
利用者名(日本語) :山崎悟志1)
Username (English) :S. Yamazaki1)
所属名(日本語) :1) 先端素材高速開発技術研究組合
Affiliation (English) :1) ADMAT

1.概要(Summary )
近年、カーボンナノチューブ(CNT)で構成された線材は、炭素繊維などの高強度繊維や金属導体に匹敵する機械特性および導電性を備えている1)。CNT線材における導電性を司るCNT自体の構造要因はCNTの結晶性から、線材の密度まで複数存在する。また、CNT表面には大気中のガスやCNTの精製プロセスで付着した官能基が存在し、CNT自体の導電性を下げる要因にもなる。よって、CNTの結晶性の向上や吸着物質を取り除くことは、導電性を向上させる効果があると期待され、これを実現するプロセスはCNT線材の実現には非常に重要である。
 今回は、市販品の多層CNTに関して、結晶性の向上や官能基除去を目的に不活性ガス中で熱処理を行った。

2.実験(Experimental)
利用装置:超高温雰囲気焼成装置
測定試料は浮遊触媒法で合成された直径が5nm以下の多層CNTを用いた。多層CNTをイソプロピルアルコールに分散させた後、ろ過することでφ30mm、厚さ0.05mmのバッキーペーパーを作製した。試料は加工成形後、1200~3000℃の高温で熱処理を行った。

3.結果と考察(Results and Discussion)
 バッキーペーパー状の試料は、2400℃以下での熱処理後では、バッキーペーパーの折り曲げを繰り返しても形状が著しく変化することは無かった。一方で、2600℃以上で熱処理した試料は折り曲げを行うとバッキーペーパー自体が崩れた。これは、熱処理温度によって、柔軟性のあるCNTの構造が変化していることを示唆している。先行研究でもCNTの構造が熱処理によりグラファイト化していることが報告されており2)、本研究で熱処理した試料でも同様の構造変化が起きていると推測する。
 今後は熱処理した試料について構造解析及び導電性を評価することで熱処理の効果を解明する。

4.その他・特記事項(Others)
参考文献
1) Lauren W. Taylor et al., Carbon. 171, 689-694(2021).
2) Un Jeong Kim et al., Carbon. 46, 729-740(2008).

支援者
藤澤 一範、姜 天水

謝辞
この成果は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務(P16010)の結果得られたものです。
信州大学の藤澤助教、姜様のアニール実験の実施には深く感謝申し上げます。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)

6.関連特許(Patent)

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