利用報告書
課題番号 :S-16-JI-0039
利用形態 :技術代行
利用課題名(日本語) :カーボンナノチューブ成長に使用する触媒担持層の構造評価
Program Title (English) :Characterizations of catalyst-support layers used in the growth of carbon nanotubes
利用者名(日本語) :渡辺博道
Username (English) :H. Watanabe
所属名(日本語) :国立研究開発法人産業技術総合研究所
Affiliation (English) :物質計測標準研究部門 熱物性標準研究グループ
1.概要(Summary )
気相触媒CVD法によるカーボンナノチューブ(CNT)成膜法において、気相触媒に暴露する前に成膜する必要がある酸化物不連続膜からなる触媒担持層の構造は,CNT成膜の均一性を左右する重要な要素のひとつである。そこで、物体の最表面の元素の面分布を定量的に評価できる走査型オージェ電子分光装置を用いて、アルミナ粒子ブラスト処理により形成した触媒担持層最表面のアルミニウムの面分布すなわちアルミナ粒子残渣の面分布を定量的に評価することを試みた。
2.実験(Experimental)
走査型オージェ電子分光顕微鏡アルバックファイ社製 SAM670Xiを用いて、各種基板上に成膜した触媒担持層の元素マッピングを行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
今回、試料基材としては、直径15 mm,厚さ1 mmの円板状試料を用い、その片面にアルミナ粒子によるブラスト処理面、シリカ粒子によるブラスト処理面、ブラスト無処理面の三区画を形成した。そして、各区画について任意に選んだ5×5 m2の領域での最表面におけるアルミニウムとシリコンの面分布を評価した。今回、同一の試料面上に形成した無処理面でのアルミニウムとシリコンのAES信号の結果から、無垢のタングステン表面の両元素のノイズレベルを決定することで、ブラスト処理面のアルミナ及びシリカの面分布を正確に決定することができた。
Fig. 1には、アルミナ粒子によるブラスト処理を行ったタングステン基板最表面のSEM像とノイズ補正後のアルミナ面分布を示す。この手法により、今後、様々な条件で成膜した担持層最表面のアルミナ面分布を測定し、最適な担持層成膜条件を明らかにする。また、シリカ分布とアルミナ分布を比較すると明らかにアルミナの方が濃密に存在することが今回明らかになった。このことは、ブラスト処理によって処理面上に残渣として定着する粒子はシリカよりアルミナの方が多いことが明らかになった。その他、炭素の面分布測定を各区画について行ったところ、かなり厚く炭素が最表面上に存在することが明らかになった。炭素は、アルミニウムの面分布測定に影響を与える可能性があるため、今後、ブラスト処理後の試料面の炭素を除去する効率的な洗浄方法を考案し、より、正確なアルミナ面分布測定を行う予定である。
4.その他・特記事項(Others)
富取正彦教授から、本研究の遂行における測定及びに測定結果の解釈に関して、多大なるご協力とご支援を頂いた。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。
6.関連特許(Patent)
なし。
Fig. 1. The SEM image (a) and the corrected aluminum map (b) of the catalyst-support layer developed by the blasting.







