利用報告書

キラル高分子薄膜の界面構造解析
春藤 淳臣1), 田中 敬二2)
1) 九州大学大学院統合新領域学府オートモーティブサイエンス専攻, 2) 九州大学大学院工学研究院応用化学部門

課題番号 :S-15-KU-0023
利用形態 :機器利用
利用課題名(日本語) :キラル高分子薄膜の界面構造解析
Program Title (English) :Analysis of Interfacial Structure of A Thin Film of Chiral Polymers
利用者名(日本語) :春藤 淳臣1), 田中 敬二2)
Username (English) :A. Shundo1), K. Tanaka,2)
所属名(日本語) :1) 九州大学大学院統合新領域学府オートモーティブサイエンス専攻,
2) 九州大学大学院工学研究院応用化学部門
Affiliation (English) :1) Department of Automotive Science, Kyushu University,
2) Department of Applied Chemistry, Kyushu University

1.概要(Summary)
 高分子材料を用いて光学異性体を分離・検出するためには、光学異性体を含む溶液・液体と接した界面において、キラル高分子が一方の対掌体と選択的に相互作用する必要がある。しかしながら、これまで界面における高分子の振る舞いに関する系統的な研究は少なく、材料設計の際に考慮されていないのが現状である。一方、我々は、キラル高分子膜の表面近傍では、キラルな液体との接触に伴い、高分子鎖の局所コンフォメーションが変化すること、およびそれに基づく不斉選択的な濡れ性を明らかにした。本研究では、不斉選択性と界面構造との相関を議論するため、「環境制御型多機能走査プローブ顕微鏡」と「表面・界面分子振動解析装置」を利用して、キラル高分子薄膜の表面形態および表面構造を評価した。

2.実験(Experimental)
ビフェニルとキラルなアルキル基 (S体) を併せもつメタクリレートモノマーを合成した。キラル高分子は、N,N-ジメチルホルムアミドおよび酢酸エチル中でのラジカル重合によって得た (PDMF, PEA)。ポリメタクリル酸メチルを標準試料としたゲル浸透クロマトグラフィー測定の結果、PDMFおよびPEAの数平均分子量はどちらも18k、分子量分布指標はそれぞれ2.1および1.5であった。PDMFおよびPEAは、n-ヘキサン溶液からスピンコート法によってシリコン基板および半円筒石英プリズムに製膜し、室温にて24時間減圧乾燥した。偏光解析に基づき評価した膜厚は、約50 nmであった。PDMF膜およびPEA膜の表面形態および表面における高分子鎖の局所コンフォメーションは、それぞれ「環境制御型多機能走査プローブ顕微鏡」と「表面・界面分子振動解析装置」を用いて測定・評価した。

3.結果と考察(Results and Discussion)
 PDMF膜およびPEA膜の表面形態を観察し、二乗平均面粗さを算出した。その結果、いずれの膜も0.3 nm程度であり、膜表面は比較的平滑であることが確認された。図1は、膜表面におけるPDMFおよびPEAの和周波発生 (SFG) スペクトルである。PDMFのスペクトルにおいて、メチレン基のCH対称および逆対称伸縮振動に帰属されるピークが観測された。一方、PEAの場合、メチレン基のピークに加えて、メチル基の逆対称伸縮振動によるピークが観測された。この結果は、重合の際に用いる溶媒に依存して、膜界面におけるキラル高分子の局所コンフォメーションが異なることを示している。

図1. 膜表面におけるPDMFおよびPEAのSFGスペクトル

4.その他・特記事項(Others)
なし。

5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
なし。

6.関連特許(Patent)
なし。

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