利用報告書
課題番号 :S-15-NI-31
利用形態 :技術代行
利用課題名(日本語) :クルクミン修飾鉄ナノコンポジット粒子の物性評価
Program Title (English) :Assessment of curcumin-spiked iron oxide nanocomposite particles
利用者名(日本語) :田上辰秋
Username (English) :Tatsuaki Tagami
所属名(日本語) :名古屋市立大学 大学院薬学研究科
Affiliation (English) :Nagoya City University
1.概要(Summary )
クルクミン(Curcumin、ウコンの抽出成分)は、多くの細胞シグナル伝達経路を阻害することが報告されており、抗がん作用を有する化合物として知られている。本検討では、肺がんに対する吸入剤開発の一つとして、クルクミンを鉄ナノ粒子に結合し、さらにそのナノ粒子をマンニトールで包含し、マイクロサイズとすることで、吸入後に肺深部を含む治療領域まで高効率で到達するようなナノコンポジット粒子の開発を行った。クルクミン修飾鉄ナノ粒子は、肺がんに取り込まれた後、各種機器により加温可能であり、がんのハイパーサーミア(温熱療法)としての効果も期待できる。
以上の計画を遂行するためには、調製したクルクミン修飾鉄ナノ粒子について各種評価を行う必要がある。今回は、磁化特性について評価するために、振動試料型磁束計を用いて、調製したクルクミン修飾鉄ナノ粒子の評価を行った。
2.実験(Experimental)
名古屋工業大学ナノテクノロジープラットフォームが保有する、振動試料型磁束計(東映工業:VSM-5)を用いた。本検討で調製したクルクミン結合鉄ナノ粒子および、調製の工程で生じる中間産物である、オレイン酸被覆鉄ナノ粒子、ポリマー被覆鉄ナノ粒子についても、VSM-5を用いて、磁化特性の評価を行った。
3.結果と考察(Results and Discussion)
クルクミン結合鉄ナノ粒子および、調製の工程で生じる中間産物である、オレイン酸被覆鉄ナノ粒子、ポリマー被覆鉄ナノ粒子の磁化・磁場曲線を確認し磁化特性を調べたところ、いずれの粒子においても、ヒステリシスがないことを確認した。このため、我々が調製した鉄ナノ粒子は超常磁性であることを確認した。クルクミンを修飾した後においてもその性質は維持されていることが推察された。
さらに、調製したクルクミン修飾鉄ナノ粒子は、近赤外線レーザーによりフォトサーマル効果を示したため、温熱療法としても、有用であることが示唆された。以上より、本検討で調製したクルクミン修飾鉄ナノ粒子は、がん治療において有用であることが示唆された。
4.その他・特記事項(Others)
【参考文献】
Agrawal D.K., Mishra P.K. Curcumin and its analogues: potential anticancer agents. Med Res Rev. 2010. 30(5):818-60.
【謝辞】
本研究課題の遂行にあたり、VSM-5の使用および、研究計画についてご指導・ご協力頂きました、名古屋工業大学 大学院工学研究科 未来材料創成工学専攻 日原 岳彦 先生に心より感謝いたします。
5.論文・学会発表(Publication/Presentation)
【国際学会発表】
Gao QiQi, Tatsuaki Tagami, Tetsuya Ozeki. Preparation of novel curcumin-loaded iron oxide nanocomposite particles for inhalation against lung cancer. 2015 AAPS Annual Meeting and Exposition. Orlando, Florida, USA. 2015/10/25-29
6.関連特許(Patent)
特になし







